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拡大打ち上げられたイプシロン=14日午後2時、鹿児島県肝付町、池田良撮影

 小型ロケット「イプシロン」が14日に打ち上げられた。延期はあったものの新型ロケットのいきなりの成功は素晴らしいことで、先ずは関係者の努力に大いに拍手を送りたい。そして、それ以上に打ち上げにまでこぎ着けたことを祝いたい。というのも、新型ロケットではそれが成功・失敗より重要だからだ。以下、イプシロンの場合の意義と展望を簡単に記したい。

 イプシロンと大型ロケット「H2B」との決定的な違いは、前者が固体燃料を、後者が液体燃料を主エンジンに使っていることだ。現時点で人類が持っている打ち上げ技術はこの2つしかない。

 固体燃料は、端的には打ち上げ花火の延長で、点火したら簡単には止まらない。液体燃料は、端的にいえばジェットエンジンの延長で、燃料の供給が自由にできる。どちらがコントロールしやすいか一目瞭然だ。

 しかし、固体燃料の方がエンジン構造がシンプルなため、一定の大きさまでは液体燃料よりも燃料効率が良くなる。だからH2Bロケットでは、補助ブースターに固体燃料エンジンを使っているのである。ブースターをあまり大きくできないという限界があるものの、低い軌道に1トン以下の人工衛星を打ち上げるのであれば、固体燃料の有利さが引き出せる。打ち上げまでの準備があまり必要でなく、打ち上げ延期になっても燃料をそのままロケットに積んだままにできるからだ。液体燃料は温度維持や腐食性などの問題で、ロケット内に保管できる期間が限られており、延期になったら、燃料をロケットからいちいち回収して専用貯蔵庫に格納しなければならない。このように両者に一長一短があるから、世界的にも固体燃料ロケットが液体燃料と平行して開発され続けている。たとえば、欧州宇宙機構は大型固体燃料ロケット「ベガ」を新しく開発し、つい1年半前に初めて打ち上げた。これはイプシロンの倍の搭載能力がある。

 固体燃料ロケット「イプシロン」の打ち上げは、宇宙科学に従事している私にとって、2つの意味で重要だ。

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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