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安倍首相の大嘘「状況は制御されている」を実現する秘策を考えた

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

 私は、2020年の東京五輪開催決定を、どうしても心の底から喜ぶ気になれない。その原因は、安倍晋三首相が最終プレゼンで、福島原発の汚染水問題に対して、「状況は完全に制御されています」「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされています」と発言したことにある。日経新聞は9月10日の社説で、安倍首相の「状況は制御されている」という発言に「違和感がある」と書いているが、違和感なんてものじゃない。大嘘じゃないか!

9月14日時点で明らかになっている汚染水漏れの状況

 ここ数カ月の報道を見る限りでは、汚染水問題は刻々と深刻さを増している。数字が二転三転するのでどれが正しいかわからないが、経済産業省が9月3日に公表した資料によれば、福島第一原発1~4号機には山側から、1日1000トンの水が流れ込み、このうち400トンが原発建屋に流入している。残りの600トンの一部がトレンチ内の汚染源に触れて、汚染水として海に放出されている。

 東電では汚染水をくみ上げタンクに貯蔵しているが、そのタンクは1000基を超え、貯蔵されている汚染水は34万トン以上になり、今後どこまで増え続けるのか分からない。

 さらにタンクの一部から高濃度放射性物質を含む汚染水300トンが漏洩したことが発覚し、8月末には、原子力規制委員会が国際原子力事象評価尺度に基づいて「重大な異常事象」に当たるレベル3と判断し、国際原子力機関(IAEA)に報告した。

タンクが並ぶ福島第一原発

 このような事態の中で、一体どのような認識をすれば、「状況は制御されている」ことになるのだろうか? 誰が見ても五輪招致のために、大嘘をついたことは明白ではないか。

 その証拠に、9月13日に福島県郡山市で開催された民主党の会合で、東電の山下和彦フェローは、「想定を超えてしまうことが起きていることは事実だ。今の状態はコントロールできていないと考えている」と述べている。また、原子力規制庁の小坂淳彦・地域原子力規制統括管理官も汚染水の貯蔵タンクに関し「管理できるところが管理できていなかった」と語っている(日経新聞電子版9月14日)。

 英国放送協会(BBC)は、

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