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リニア新幹線は「3・11前」思想で走る

尾関章 科学ジャーナリスト

 東京五輪2020年開催の慶祝一色ムードに、私は先日のWEBRONZAで苦言を呈した。それに輪をかけて「どうかな」と思ったのが、東京―名古屋間の全容が見えてきたリニア中央新幹線構想のお祭りムードだ。どちらも3・11後の社会再設計をどこまで真剣に考えているのか、という懸念があってのことだ。五輪は首都とはいえ1都市の話だが、リニア新幹線は列島を串刺しにする。それだけ重い問いを投げかけていると思う。

 東京―名古屋間の開通は2027年、東京―大阪間は2045年なのだから、私のような60超世代が口を出すべき論題ではないのかもしれない。だがどうしても拭い去れないのは、なんのために造るのかという疑問である。物流の動脈なら高速道路がある。東京―大阪間の日帰り出張を可能にするものとしては東海道新幹線もあるし飛行機もある。地域振興を言うのなら、リニア新駅周辺は栄えるかもしれないが、そこから離れた経済圏や今の新幹線沿線では地盤沈下も起こるだろう。

 東京人がアフター5に名古屋で飲める、その逆も可なりという期待もあるようだが、これなどは愚の骨頂だ。東京―名古屋間はわずか40分なので、6時に出ればワインを2、3杯飲んで11時に戻って来られる。だが、気軽に飲みに行けるかどうかは時間よりも値段の問題だ。ワイン2、3杯のためにそれより1桁多い交通費をかける気になるだろうか。昔風に言えば、下駄代わりにならない乗り物なのである。

 高速交通の「夢とロマン」ばかりがふりまかれている。だが、それらは首をひねらざるを得ないものがほとんどだ。だから乗る側の立場からみると、なんのために造るのかがはっきりしない。

 これに対して、造る側の論理はよく見てとれる。

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筆者

尾関章

尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト

1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。週1回の読書ブログ「めぐりあう書物たち」を開設中。

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