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地球温暖化懐疑派としてIPCC第5次報告書に物申す(前編)

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第5次評価報告書(第一作業部会分)が公表され、過去60年間の温度上昇(地表平均で0.7度)の主要原因(dominant)が人為的である可能性が更に高まったと評価された。過去60年のうち、実際に温度が上昇したのは過去30年で、しかも1970年代までは自然活動が大きく寄与しているので、事実上、過去30年の温度上昇を人間活動の寄与によるものだと断定した内容になっている。

 さて、この地球温暖化問題に関しては、「懐疑派」の存在を耳にした方が多いだろう。そして多くの日本人が「懐疑派は現実を見ていない」とか「石油メジャーの御用学者だ」と思っているのではないか。そこで本稿では、この懐疑派とIPCC関係者との対立のそもそもの理由について私の所見を述べたい。

 まず、そういう批判を甘んじて受けている彼らは、実はデータ解析の立場から真面目に温度上昇の原因を分析している科学者がほとんどであることを強調したい。彼らは、決して温暖化を否定している訳ではない。筆者が専門とするスペース物理学(地磁気や電気伝導度が寄与する地球惑星現象を調べる研究分野)の研究者でこの問題に携わった者は、多くがこの立場だ。

図1:P.スタウニング博士が2011年に発表した論文の図。〈上〉太陽黒点活動の周期は約11年と言われるが、これは9年~12年の変動幅があり、その周期(赤線)、正確には極小期、が短いほど地表の平均温度が高くなる。2つの曲線が3年ほどずれているのは、因果関係の存在を意味する。〈下〉太陽活動の各周期の太陽黒点数(黒線)は地表の平均温度より20年ほど遅れて変化する。これは直接の因果関係がほとんどないことを意味する。

 データ解析の立場とはどういうことか? 第一に、

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