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秘密保護法よりも「公開すべきデータを公開しない罪」の新設が必要だ

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 特定秘密保護法に関する議論で忘れられたことがある。それは地球観測データだ。

 福島原発事故の際、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の結果が公表されず、モニタリングポストの値も肝心の福島原発まわりは電源喪失で出ず、人々が避難すべきかどうか分からなかったことは記憶に新しい。後日になって福島原発が想像以上に危険だったという情報が出てきたが、それは収束の目処がたったあとだった。

SPEEDIの画面例

 他にも、気象学会理事長の名前でシミュレーション結果の公表自粛が要請されたり、海洋汚染に関してネイチャーが受理した論文が非研究者である上司の命令で差し止められたりした。長い歴史を持つ気象研究所の放射性浮遊物定点モニターに至っては、公表どころか予算そのものが事故3週間後にいきなり止められた。

 あの事故ではっきり分かったことは、公的立場の人間は「情報を出さないゆえに国民が受けるリスク」よりも、「情報を出す行為に対して責任を負う」のを恐れるということだ。

 必要な緊急情報が手に入らなければ、国民は避難し遅れたり、不安で神経症になったりする不利益をこうむる。にもかかわらず、このように公表が自粛された主な名目は「パニック防止」だ。それは「デマ防止」「国家保全」という機密保護法の適用範囲と重なり、だからこそ「情報を出す行為」に躊躇することになる。

 さすがに

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