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何故わたしのノーベル医学生理学賞の予想が的中したか

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 今年9月27日WEBRONZA掲載の筆者のノーベル医学生理学賞予想が的中した。10月7日に発表された受賞分野ならびに受賞者3人ともを予言できたわけである。残念ながら化学賞の方は予想がはずれた(もっとも「今年がだめでも数年の内には」と書いたので、まだはずれたとはいえないかもしれない)が、実は医学生理学賞にはかなりの自信があった。というのは、以下のような背景や理由があったからである。長年、米国で研究生活を続けたからこそ見えてきたことによる推理と言えばいいだろうか。

 筆者が米国で博士号を取得し、ポスドクそして自分の研究室を主宰していた1980年代後半から90年代前半に、今回ノーベル医学生理学賞を受賞したジェームス・ロースマン氏(James Rothman)とランディー・シェックマン氏(Randy Schekman)は、前者は動物細胞を使った生化学的手法で、そして後者は酵母を使った遺伝学的手法で、次から次へと細胞内たんぱく質が膜輸送によって細胞外へ放出されるメカニズムを明らかにしていった。当時、筆者をふくめた多くの研究者が、これらの一連の発見の生物学における重要性、発見自体のエレガントさ、そして他の研究グループに対する圧倒的優位性から、この2人は必ずやノーベル賞を受賞するであろうと思っていた。実際、

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