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なぜヒッグス粒子がなければならなかったのか?

久保田裕

今年のノーベル物理学賞は、万物に質量を与えるヒッグス粒子と、そのメカニズムのアイデアに贈られることが決まりました。ノーベル賞決定とともに大量の報道が行われましたが、なぜヒッグス粒子などというものを考え出さねばならなかったのか、という点についての説明は、ほとんど行われなかったように思います。

 当日の朝日新聞の解説欄では、この辺りを説明をしようと試みたのですが、行数が短く削られ、かなり中途半端な記事になってしまいました。ただでさえ分かりにくい話なのに、さらに舌足らずになってしまい、申し訳ありませんでした。そこで今回は、WEBRONZAの場を借りて、そこらの解説を再び試みたいと思います。

 私が、ヒッグス粒子に対して持った最初の疑問は、「質量なんて世界の初めからあったことにすればいいだけじゃないのか」ということでした。現在の宇宙論では、宇宙誕生の大爆発・ビッグバンの当初はモノに質量はなく、1000億分の1秒ほど経った後に、ヒッグス粒子が忽然と現れて質量が生まれた、というストーリー展開になっています。ですが、なんでそんな持って回った考え方をする必要があるのか、ということがわからなかったのです。

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(残り:約1501文字/本文:約2002文字)