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安いジェネリック薬の普及を阻むものは何なのか?

浅井文和 医学文筆家

胃がんの薬が年10万円安くなる

 もしも、あなたに胃がんが見つかって、手術を受けた場合を想像していただきたい。

 ある抗がん剤のカプセルを1年間のむことで、5年後の生存率が改善することがわかっている。
 ただ、この抗がん剤、値段が結構高い。
 1日6カプセルを28日間のむと、薬代だけで11万円余に達する。
 公的医療保険の対象になる薬なので、70歳未満ならば自己負担は3割だ。
 あなたが調剤薬局の窓口で請求されるこの薬代は約3万4千円になる。ちょっと、慌てて財布の中をのぞき込む金額ではないだろうか?
 途中で薬をのんだり休んだりしながら1年間続けると、約27万円にもなる。

 ところが、同じ成分で薬価が安いジェネリック薬(後発医薬品)を使うと、これがなんと約17万円になる。
 1年間で約10万円分、あなたの負担を減らすことができる。

 このジェネリック薬は今年6月に発売されたばかりだ。1999年に発売されていた先発薬の特許切れを経て安い選択肢ができたわけだ。

 あなたがジェネリック薬を選ぶ意義は、あなたの家計の負担を減らすだけではない。
 窓口での自己負担が3割の場合、残りの7割はみんなが支払う保険料や、税金などの公的負担でまかなわれている。あなたが10万円を節約できるだけでなく、みんなのお金が23万円も助かる。とってもステキな社会貢献ではないだろうか。

 ジェネリック薬とは、新薬メーカーが販売していた先発薬の成分に関する特許が切れた後、同じ成分で作られる薬だ。先発薬の同等とされ、代替可能であると、データを元に審査を受けて国の承認を受けて発売される。

 先発薬メーカーは画期的な新薬を開発するために莫大な研究開発費を使っている。研究開発費は新薬発売後の薬代に含む形で回収している。一方、特許切れの成分を使うジェネリック薬メーカーは開発費が少なくてすむから薬代は当然安くなる。

 2009年度の国民医療費は36兆円に達する。
 このうち薬剤費は約9兆円を占めると推計されている。
 薬剤費のなかには、特許が切れていない薬の分もあるものの、ジェネリック薬を徹底的に使うと1兆数千億円の節約ができるという試算もある。消費税引き上げを前にして、この金額の節約をする意義は大きくはないだろうか。

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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 医学文筆家

元朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。退社後、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。公衆衛生学修士(専門職)。日本医学ジャーナリスト協会理事。日本専門医機構理事。

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