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グルジアの丘から見つかった「五人きょうだい」 ホモ属の起源論争へ

内村直之 科学ジャーナリスト

グルジアといえば、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地域にある国だ。古くからワインの名産地として知られるこの場所が、実は動物や人が東西に交流する要(かなめ)となる場所であったことがわかったのは最近のことである。ここから発掘された180万年前の「五人きょうだい」が、私たちのルーツの謎を解くカギになるかもしれない。

拡大今秋のグルジア・ドマニシの丘。発掘場所は、赤い屋根の教会の後ろ側にある=舛田麻美子さん提供
 首都トビリシから南西に約一〇〇キロ、マシャベラ川の谷から80メートルの高さに位置するドマニシはユネスコの世界遺産にもなっているグルジア考古学の聖地だ。当初は、6世紀から14世紀にかけて栄えた中世の街の遺跡として知られていた。そのころはアジアを東欧を結ぶいわゆるキャラバン(隊商)のルートの要害の地として大きな街があったらしい。今残るのは、丘の上の教会のみである。

 考古学的な発掘作業は戦前から始まっていた。断続的ではあったが、発掘は続いた。1982年、砂まじりの粘土を掘り進んでいたところ、深さ3メートル、直径2メートルほどの穴が見つかり、その中には、化石化した動物の骨がたくさん見つかった。中世どころか、100万年前という古いものらしい。考古学的発掘から古生物学の発掘へと世界は広がった。見つかる動物の種類は相当なものだった。剣歯虎、ジャガー、ゾウ、サイ、巨大なクマ、キリン……その中には、ヒトが作ったものと見られる原始的な石器もあった。1991年9月、その中から下顎の骨が見つかった。どう見ても霊長類である。いや、ヒトか……!

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筆者

内村直之

内村直之(うちむら・なおゆき) 科学ジャーナリスト

科学ジャーナリスト。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程満期退学。1981年、朝日新聞入社。福井、浦和支局を経て、科学部、西部本社社会部、科学朝日、朝日パソコン、メディカル朝日などで科学記者、編集者として勤務し、2012年4月からフリーランス。興味は、基礎科学全般、特に進化生物学、人類進化、分子生物学、素粒子物理、物性物理、数学などの最先端と科学研究発展の歴史に興味を持つ。著書に『われら以外の人類』(朝日選書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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