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内側から見た米国の大学入試制度

大栗博司 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長 、 カリフォルニア工科大学教授 ・理論物理学研究所所長

 私の所属するカリフォルニア工科大学(通称カルテク)は、学部学生の数にして東京大学の15分の1という小さな大学であるが、122年の歴史の中で卒業生から15名、教授から16名のノーベル賞受賞者が輩出している。また、英国の教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』の世界大学ランキングでは、長年1位だったハーバード大学や理工系の雄であるMITを退け、2年連続(記事末の注参照)で1位になっている。優秀な学生を集める秘密を知ろうと、入試委員会に参加してみた。

 米国の入試制度は「多様な人材を確保する仕組み」と紹介されることが多いが、実は20世紀の初頭までは、今の日本と同様に学業成績と筆記試験の点数によって入学者を選んでいた。しかし、1920年代に教育熱心なユダヤ人の子弟が大挙してハーバード大学などに入学するようになったので、「人格による合否判定」という主観的要素を盛り込むことで、ユダヤ人の入学者数を恣意的に制限できるようにした。そもそもの始まりはユダヤ人差別だったのだ。

 1960年代に公民権運動が盛んになり、さらに1978年に州立大学の入試で人種を考慮に入れることは合憲であるという連邦最高裁判決が出ると、大学内の人種構成を、人為的にでも米国全体の人種構成に近づけることが公に奨励されるようになった。また、大口の寄付が期待できる資産家や卒業生の子弟を入試で優遇することも、公然と行われている(カルテクでは行われていない)。客観的な基準による説明責任を求められない入試制度は、大学の運営に都合のよいものだったのだ。

 米国の大学では、入試は専門の職員に任されていることが多いが、

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