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安堂ロイドは半沢直樹の夢を見るか? ――ポストヒューマンをめぐる展望 〈上〉

広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)

 ややクサいタイトルかもしれない。
 あらためて記すのも陳腐かもしれないが、これはフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(1968年)に由来する一バージョンで、同小説は人間とアンドロイドの境界線を共感能力ということを軸に描き、また『ブレードランナー』(1982年)として映画化され一層世に知られるようになったものだった。

 『半沢直樹』の後を受けて日曜夜9時の時間帯で10月13日にスタートしたキムタク(木村拓哉)主演の『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』(TBS系)は、初回の平均視聴率は19.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録するなど比較的好調であるようだ(その後やや低下したようで半沢直樹並みになるかどうかは未知数だが)。

 アンドロイドやAI(人工知能)といったテーマが、トレンディドラマの題材になるというのは、ちょっとした時代の流れや人々の関心の方向を反映しているのかもしれない(それにはIT関連の技術のみならず、いわゆるiPS細胞など再生医療をめぐる動きも関係しているだろう)。

 もちろんAIをめぐるテーマや人間とロボット、アンドロイド等といった話題は、上記の『ブレードランナー』やスピルバーグの『A.I.』等々、無数とも言えるかたちで様々な映画の主題になってきた。

 ここで記してみたいのは、こうした話題を、現在という時代との関わりにおいて少し大きな視点で(かつ駆け足で)捉え直してみる試みである。

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