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脳とビッグデータが合わさるとどうなるか

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 「“マーケティング頭脳”つき自販機お目見え」というニュースが、先々週あたりメディアで流れた。飲み物の販売機が、備え付けのカメラで客の顔を認識する。データベースと照らし合わせて性別、年齢ごとに 「イチ押し 」の飲み物を薦める。駅などですでに経験された方もいるだろう。「すごい世の中になった」という感想と同時に、やはり一抹の不安を覚える。

 消費者の集団としての動きや個人の好みを、すばやく自動的に 感知してスマートに対応する。アマゾンなどインターネット通販あたりから目立ちはじめた「スマート」商法だ。少し前だが、IC乗車券「Suica(スイカ)」の利用データを、JR東日本が利用客への説明なしに企業に提供していたという事件?もあった。 結局、客からの申し出があればデータを提供しない方針に変えた。

 スマート商法の前提としての「ビッグデータ」という言葉も、あちこちで聞くようになった。具体的には何が進行し、これからはどうなるのだろう。それについて少し深く考える機会を得た。

 「米国電気電子学会(IEEE)」は、この分野の世界全体を事実上統括する巨大な超学会組織だ。傘下の「行動メディア技術」分科会と「脳・健康情報学」分科会の合同年次大会が、10月下旬に群馬県前橋市で開催された。基調講演者のひとりとして招かれた筆者は、

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