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ドイツに見る再生可能エネルギー制度改革

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 2022年までの脱原発を目標とするドイツは、再生可能エネルギーの大幅な導入と省エネを積極的に進め、これらを「エネルギー大転換」と呼び、世紀の大事業として位置付けている。そのために、再生可能エネルギーの普及拡大のための制度である再生可能エネルギー固定価格買取制度EEGを2000年から実施し、電力の20%以上を風力、太陽光などの再生可能エネルギーで賄う成果をあげたが、電力代金の値上げなど、改革をせまられている課題も多い。2012年度から再生可能エネルギーの固定価格買取制度をはじめた日本が学べる経験と教訓をくみ出すことができる段階に達している。2013年9月のドイツ総選挙を経て、CDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社会民主党)の大連立政権交渉に当たり、EEG改革問題が1つの焦点となり、CDU側から次のような提案がなされたという(Wirtshaftwoche 08.11.2013)。

改革の提案

1、 新設備への過剰投資は削減する。
2、 全ての技術への補償を連続的に低下させる。風力と太陽光がエネルギー転換の2つの柱であることは今日においてもそうである。
3、 太陽光への補償は、これまでのように強く下げる。1年間に何度も行う(「呼吸するふた」)
4、 バイオマスは廃棄物、残渣処理の場合のみ認める。景観保護をすすめ、土地の(カロリーを上げるためのバイオガスプラントへ投入する)トウモロコシ化を阻止する。
5、 よい立地の風力発電の補償は下げる。良い条件への立地をすすめる。これらのことが事実上、エネルギー転換のコストを下げる。
6、 2020年までに、洋上風力は6.5ギガを設備し、全体で10ギガにする。
7、 風力か太陽光か将来において、ベストであるかどうかまだ明らかでない。2016年から大規模太陽光を、試験的に建設する計画が提案されている。
8、 小規模を除き、新しいグリーン電力設備は、直接取引すべきである。この提案の結果はまだ不明であるが、グリーン電力はまだ高い。現在では安い電力がこのモデルで取引できる。バイオガスは需要に対応でき、利益があるが、太陽光は問題がある。
9、 送電業者は、補償なしに風力と太陽光の5%をカットできる。ネットワークが弱いところでは、もっとカットできる。これまでは、プレミアムを得ていた。この提案の目的は明らかである。大連合政府は、再生可能エネ建設と電力ネット容量を同期化させる。
10、 再生可能エネの電力網への基本的な供給補償は、EEGの重要な柱として維持する。
11、 大規模風力と太陽光の運転者が将来、その設備のベースロードを賄うかは未解決である。例えば、エネルギー不況の時に、ガス発電を買うかどうかである。
12、 自家発電は将来、EEG賦課金を支払う。CHPは別である。
この他、容量市場の創設についてSPDが要求しているのに対して、CDUは条件付の容量市場創設を検討していると伝えられている(Tagesspiegel,10.11.2013)。

 今回の再生可能エネルギー法改革問題を見ると、その中心は、買取価格と買取条件に関するものであり、再生可能エネルギーの種類別に、買取価格と買取期間、条件を定めて、再生可能エネルギーを拡大してきたこれまでの制度の効果は認められる。そのうえで電力料金負担の在り方、負担の公平性、産業国際競争力、をどう確保していくかという問題が発生している。とくに、太陽光発電については、発電量比率を超える賦課金の比率の高さ、中国製パネルの浸透など、ドイツの産業政策として、決して成功とはいえない問題を抱えている。
 また、調整電源を設置して、経済的にも引き合うようにしなければ、風力や太陽光など天候依存型の電源を保証することはできないので、電力容量市場を創設して待機電力料金を支払い、調整電源の調達コストを再生可能エネルギーの調達コストに含めるような制度設計が必要になっている、
 ドイツの再生可能エネルギー法改革をめぐる問題は、買取価格の適時的確な調整の必要性、負担の公平性確保の重要性、送電線などのインフラ整備の計画性と住民の受容性確保、産業の国際競争力と市民の負担の調整問題、調整電源の確保と費用負担問題、などを示しており、今後再生可能エネルギーを拡大していくうえで、避けて通れない問題群であり、日本などは後発者の立場から注意深く学ぶ必要がある。
 今後の見通しについてまとめれば、固定価格買取制度の枠組みそのものは変わらず、割り当て(RPS)制度は導入される見通しはないが、入札制、直接取引、市場プレミアムの拡大が進められる可能性は高い。EU理事会から、2013年11月5日に「電力への国家介入の指針案」がだされ、FITと産業への免除規定は、一定期間内には無くす方向性が示されていることも、大きな圧力である。
 第2に、適切な価格調整、頻繁な調整回数、買取期間の短縮などは、ドイツに先んじて固定価格買取制度を導入した隣国のデンマークが、現在PSO(Public Service Obligation )という制度によって、年4回の価格調整と買取期間の短縮を図っているのは、注目に値する。
 第3に、負担の公平化という点では、低所得者層への負担軽減措置、配慮、エネルギー多消費産業への免除の見直しが必要である。
 第4に、再生可能電力の調整電源のコスト負担問題については、再生可能エネルギー導入に伴い発生する不可避の問題として、位置づける必要がある。

日本にとっての教訓

ドイツのEEG改革の教訓を日本はどう生かすべきか。FIT実施後1年たった日本では、認定された再生可能エネルギーの95%が太陽光であるという結果になった。ドイツよりもさらに太陽光偏重という結果になった。これは、再生可能エネルギーの優先接続という原則が日本ではまだ保証されておらず、風力発電などで制約が多いことを示している。
日本のFITはドイツのEEGと制度が異なるところがあり、日本の場合には、再生可能エネルギー固定価格買取価格と回避可能価格との差が電力料金に上乗せされ、電力事業者による優先接続の義務が限定 ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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