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京都の数学研究所ネットワークが産んだ数学

内村直之 科学ジャーナリスト

京都大学数理解析研究所という小さな数学の研究所で人生を交差させた数学者たちをテーマに、『古都がはぐくむ現代数学 京大数理解析研につどう人々』(日本評論社)という一冊を作った。人名索引を巻末につけたのだが、本が出来上がってホッとした今、その索引にあがった人名の数を数えてみたら、約350人いた。その多さに私自身、ちょっとびっくりした。本の中で詳しく取り上げた数学者は20人ほどだから、一人当たり10数人の関係者を取り上げたことになる。 

京都大学数理解析研究所。ひたすら静かなところである=京都市左京区の京都大学
 いや、関係した人たちは本当はこんな数ではないだろう。一人の数学者の周りには、数十人の別の数学者(物理学者が含まれることもあるだろう)がいるはずだ。基礎科学というものは(もちろん、その火種は一人の発想である場合が多いが)、そういう何人ものネットワークの中で大きな発展が醸し出される。
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