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特定秘密法で科学観測データの公開がより困難になると考える理由

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 特定秘密保護法が成立した。私は10月9日のWEBRONZAでこの法律案に対する懸念を書き、「公開すべき情報を公開しない罰則の新設」を提案した。残念ながら私の懸念は払拭されないどころか、ますます強まった。

 科学論文は誰が読んでも誤用されない書き方が求められる。法律も同じだ。内閣が必要と思ったから法律が提案され、基本的な考え方への賛同者が多かったら、法律が成立したのだろう。そこに悪用の意思はあるまい。しかし、立案者以外の誰が運用しても悪用されないように条文を作ることが法治主義の原則だ。その意味で特定秘密保護法には大いに不安を感じる。というのも、特定秘密になりうる対象があまりにも曖昧で、後世に悪用を計る政治家が出て来ない保証がないからだ。

 問題はそれだけではない。直接的な影響として、本来公開されるべき情報やデータが「自粛」によって公開されなくなる可能性がある。罰則の強化という強いメッセージは、強力な自主規制を伴うのが普通だからだ。具体的には、

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