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女性物理学者ファビオラ・ジャノッティさんの魅力

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 ヒッグス粒子発見という世紀の発表を欧州合同原子核研究機関(CERN)が2012年7月4日にしたとき、3000人を擁するATLAS実験グループの代表者として成果を語ったのがファビオラ・ジャノッティさんだった。翌年11月20日に浜離宮朝日ホールで講演した彼女は、ウィットに富んだ語り口とお茶目で気さくな人柄で日本の聴衆を魅了した。

講演するファビオラ・ジャノッティさん

 ファビオラさんは、1989年にイタリア・ミラノ大学で素粒子物理学の博士号を取得、94年からCERNで実験物理学者として働いている。実験グループの代表者は選挙で選ばれる。世紀の発表のときに彼女がその任にあったのは、まさに天の配剤、「女性物理学者の魅力を世界に広く伝えよう」という神様の思し召しではなかったか。

 今は代表者の任期を終えたものの、引き続き世界を飛び回る忙しい日々を過ごす。今回も来日した翌20日、午前中に柏市の東京大学キャンパスにあるカブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)でインタビューを受けたり、専門家向けの講演をしたりした後、築地の朝日新聞社へ。講演会が終わるとすぐにつくば市のホテルに向かい、2日間の高エネルギー加速器研究機構での評価委員会に出席して23日朝に帰国するというハードスケジュールだった。

 米タイム誌が「Person of the Year 2012」の候補者として彼女を取り上げたとき、真っ赤なワンピースにハイヒールを履いたエレガントな写真が掲載された。女優のように美しい立ち姿。同じようにシャキッとした服装で現れるのかと思ったら、ブーツにシックな色合いのベイズリー柄のジャンパースカートという装いだった。旅先だから当然か。からし色のマフラーがアクセントになっている。

 ファビオラさんの茶目っけがいかんなく発揮されたのが、

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