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[4]大間原発、なぜフルMOX炉を新設するのか?

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 晴れた日、北海道の玄関・函館から、建設中の大間原発(青森県大間町)がよく見える。23kmの津軽海峡を遮るものは何もない(写真)。福島の事故後、1年半の休止期間を経て建設工事が再開された電源開発(Jパワー)の大間原発は、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)であり、出力は日本最大の1基あたり出力138万kW。最大の特徴は世界初のフルMOX炉であり、すべての燃料がMOX燃料(プルトニウムとウランの混合燃料)を使える設計になっている。これは世界でも例がなく、現在までに日本で許可されているMOX燃料運転(プルサーマル)が「最大でも燃料の3分の1まで」であることを考えても、大胆な試みであることがわかる。

拡大函館側から見た大間原発。田村昌弘司氏撮影

 さらにいえば大間原発は電源開発にとって初の原発だ。田中俊一原子力規制委員会委員長も「事故を起こした日本において、3分の1炉心のMOXすら、まだまともにやっていないところで、世界でやったことのないフルMOX炉心をやるということについては、相当慎重にならざるを得ない」(2014年1月22日、記者会見)と述べている。

大間原発は、本州の最北端、青森県の下北半島の大間崎に立地する。30km圏内(UPZ:緊急時防護措置準備区域)に北海道函館市の27万人が入り、50km圏内(PPA)となると、青森県側の9万人に対して、道南側には37万人が住んでいる。

 実際、福島第1原発の事故結果をもとに、シミュレーションを行った結果によれば(青山貞一氏による)、函館市が大きな影響を受け、さらには遠く、室蘭市まで放射能の雲(プルーム)が及ぶという。

 ところが、大間原発の立地に関しては、「地元」が青森県と大間町に限定され、事故の場合に大きな影響の及ぶ可能性の高い、北海道と函館市側の意見を聞く手続きがほとんどないままに、大間原発建設が着工され(2008年)、東日本大震災のあと、いったん休止されていた建設工事が再開された(2012年10月)。本州のさいはてにリスクの高いフルMOX炉を立地させる積りであったのであろうが、福島原発事故のあとでは、海峡の北にある北海道と函館市という人口の多い地域が、事故の心配をせざるを得ない地域になってしまった。

原発、フルMOX、再処理工場。三つの核リスク

 2012年9月14日、当時の民主党政権は、革新的エネルギー・環境戦略を発表し、「2030年代に原発ゼロを目指す」「新設・増設は行わない」という考えを示したにもかかわらず、翌日の9月15日には、経済産業大臣が青森県知事に対して「既に設置許可を与えている原発について、これを変更することは考えていない」と述べ、さらに9月18日には、内閣官房長官も同様の立場を表明した。これを受けて、電源開発は3.11以降、休止していた大間原発の建設工事(37%)を再開するに至った(2012年10月)。

 40年で廃炉という原則に照らしてみて、2030年代に原発ゼロを目指すのであれば、これからの原発建設はありえないはずである。にもかかわらず、大間原発については、民主党政権は従来の方針をかえることができず、9月14日の革新的エネルギー・環境戦略が、国のエネルギー・原子力戦略の根幹にかかわる核燃料サイクル政策については、見直しを行わず、既存の方針を踏襲したことを意味する。
フルMOXの大間原発と、同じ青森県の六ケ所村に立地する使用済み核燃料の再処理施設は深いつながりがある。それは、電源開発の函館市への回答書(2012年10月31日)で、大間原発について「核燃料リサイクルの中核的担い手である軽水炉によるMOX燃料利用計画の柔軟性を拡げるという政策的位置づけ」と述べていることに示されている。その再処理方針を民主党政権が変更できなかったのは、再処理中止の場合、使用済み燃料の県外移送が自民党政権下の契約書にあり、さらに日米連携の原発輸出計画が検討され、それと関連して、「輸出」した原発の使用済み燃料を六ケ所村で再処理する案もあったと、菅直人元首相が証言している(『東洋経済』2013年7月20日号、91頁)。

拡大建設中の大間原発。2013年11月、撮影・朝日新聞・綱島洋一

 安倍首相は、建設中の大間原発と島根3号機について「新増設には入らないだろう」として両原発の建設容認の考えを明らかにしている(NHK,2014年1月19日)。しかし、大間原発は従来の原子炉の立地、運転とは異なる、以下のような特質と問題点がある。

 近くの海底に長大な活断層の可能性

 まず、原子炉そのものに関して、(1)世界で初めてプルトニウムとウランを混合したMOX燃料を100%使う、1基当たり出力も世界最大級である。

 (2)その使用済みMOX燃料の行き場が決まっていない。

立地に関して、(3)大間原発付近の海底に、長大な活断層が存在する可能性が変動地形学者から指摘されている。大間崎弁天島の北方海域に南傾斜の40km以上の活断層があるとされ、さらに南西40-50kmの海域で平館海峡撓曲は活断層であると指摘されている。原子炉建屋直下に分布する「シームS-10」も活断層の疑いが濃い。

 (4)大間原発が東日本火山帯の上に建設される問題点も指摘されている。青森県側で15~28kmの範囲に3つ火山(恐山等)、北海道側にも北側約26~39kmの範囲に2つの火山(恵山等)が存在し、かつ敷地内には、現に溶岩の貫入や火山堆積物が厚く堆積している。

 (5)津軽海峡という公海に面した大間原発は、国際海峡と3海里(5.5km)しかなく、テロの絶好の標的になる可能性がある。

 (6)さらに立地と施設の基準に関して、電源開発は、原子力規制委員会による安全審査手続きに入る「原子炉設置変更許可申請」を今春以降に予定しているが、フルMOX炉は核分裂の制御が難しいとされており、商業発電はこれまで世界でも例がない。しかも、電源開発は通常の原発の運転経験さえもまだない。

 (7)立地手続きについても、旧来のまま、地元の範囲が極めて狭く、福島の事故を踏まえた制度改正が行われていない。函館市側の意見聴取は第2次公開ヒアリングで1回あったのみである(2005年10月)。

 (8)環境影響評価についても、温排水による海や漁業への影響、函館市に水揚げされる海産物の風評被害などへの懸念が出されているにも関わらず(函館市議会意見書、2008年6月)、十分に検討されていない。

 以上の8つの問題点のうち、福島の事故を経験した現在、とくに(6)の地震と活断層、フルMOXの安全性、過酷事故対策などが従来のままの基準で、建設工事の再開がされ、 ・・・続きを読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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