2014年01月28日
日本の医学研究を推進するアクセルなのか。
あるいは、足を引っ張るブレーキなのか。
昨年4月、安倍晋三首相が米国立保健研究所(NIH)をモデルにした「日本版NIH」構想を表明して以来、学界や産業界を巻き込んで、賛否両論、期待と懸念が入り乱れた。この1年間近くの動きは、「NIH騒動」とも呼べるだろう。
「日本版NIH」という言葉は想像力をかき立てるが、当初は何をするのかが見えてこなかった。
医学の研究費を大幅に増やすのか?
新しい研究所を作るのか?
斬新な人材活用で研究を活性化するのか?
私もいろいろな人が発言するのを聞いたが、話す人によって日本版NIHとして頭に描いていることが違っていた。
今年1月22日、政府の専門調査会の報告書がまとまり、日本版NIHの姿がやっと固まってきた。結果的には、収まるところに収まった感がある。新組織をつくるものの、それほど革新的な改革には見えない。
ただ、この1年近くの動きは、日本の医学研究のあり方を考える上で、貴重な経験だったと言える。騒動を振り返ってみよう。
そもそもお手本にするというNIHとは何か。
NIHは1887年に設立された米国での医学研究の拠点だ。がんや老化など27の研究所とセンターで構成され、医学研究全体をカバーする。2012年度予算は約310億ドル(約3兆円)で、日本の生命医学研究予算の約10倍。予算は自前の研究所で使うだけでなく、外部の大学や研究機関に研究費として配分している。現在の所長はフランシス・コリンズ氏。ヒトゲノム研究を引っ張ってきたリーダーとして世界的に著名だ。
日本版NIH設立が打ち出されたのは、昨年4月19日、安倍首相が日本記者クラブで語った「成長戦略スピーチ」だった。
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