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投下6年後に出版された『原子爆弾の医学的影響』がネットで無料入手可能に<上>

長瀧重信 長崎大学名誉教授(放射線の健康影響)

無料でダウンロードできるようになった

 1951年にアメリカで出版された『原子爆弾の医学的影響(MEDICAL EFFECTS OF ATOMIC BOMBS)』(英文の正式タイトルは記事末の文献参照) の6冊すべてが、インターネットからダウンロードできるようになりました。そこで個人的にすべてダウンロードしてCD-ROMを作成し、昨年の暮れに国内の関連研究施設約30箇所にお送りしました。

拡大原子爆弾の医学的影響(Medical Effects of Atomic Bombs:The Report of Joint Commission)全6巻、1951年、アメリカ陸軍病理研究所 出版

 この6冊の原本は、日本では放射線影響研究所(放影研)の広島の図書室に一組あるだけです。放影研の広島の図書室と長崎の原爆資料館にはコピーが一組ずつありますが、ほかの場所にはありません。

 1951年までは日本は連合軍の占領下にあり、日本人による原爆についての研究、調査はすべて禁止されていました。1951年というと、私は大学生でした。占領時代の雰囲気はよく覚えています。1954年の新聞には、東京大学の都築正男教授が1945(昭和20)年10月に独自に「総合医学 」に投稿した“いわゆる原子爆弾傷”の一部が伏字になり、同様の記事を投稿した「日本医事新報」11月号は発売禁止、没収になったと9年前のことが書かれております。当時は、日本人の原爆に関する投稿は禁止されていたこと、あるいは検閲を受けていたことが事実であったことがわかります。

 しかし、この本のタイトルにJoint Commission とありますように、この調査には東京帝国大学の教授、教官、医学生などを中心として非常に多くの日本人が協力しています。そして、181冊1万ページに及ぶとされる「原爆被害の実態を調べた報告書」はアメリカ国立公文書館に保存されています。そのまとめがこの6冊の本として1951年にアメリカ陸軍病理研究所により刊行されたのです。

 貴重な原著ですので、私が放影研の理事長時代に前述の二組のコピーを作りました。日本にも本があるのに、この日米協力の報告を「アメリカ公文書館に封印された報告書」などとテレビが取り上げたこともありました。ですから、私はこの本の存在を広く日本の社会に知らせたいと思っていました。

 昨年の夏、福島の原発事故に関して東京の米国大使館で米国エネルギー省の方とお会いした時に、 ・・・ログインして読む
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筆者

長瀧重信

長瀧重信(ながたき・しげのぶ) 長崎大学名誉教授(放射線の健康影響)

長崎大学名誉教授。1932年生まれ。東京大学医学部卒業。東大大学院、米ハーバード大学などで学んだ後、東大医学部付属病院外来医長などを経て、長崎大学医学部教授(内科学第一教室)、放射線影響研究所理事長を務めた。長崎大学時代に被爆者の治療、調査にあたった経験を踏まえて、旧ソ連チェルノブイリ原発事故がもたらした健康被害の調査活動や東海村JCO臨界事故周辺住民の健康管理にかかわった。 【2016年11月12日、逝去】

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