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【自然エネルギーの現状】 太陽光はバブル、風力は閑古鳥。FITを導入してもこうなる訳

竹内敬二 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

 自然エネルギーの電気を買い取る「固定価格全量買い取り制度」(FIT)の開始から1年半が経つが、どうもうまくいかない。太陽光発電では認定されても工事を始めない業者が多く、経産省が認定取り消しに乗り出した。一方、世界では自然エネルギーの主流である風力が一向に伸びず、ついに2013年度は2001年度以降で最低の導入量になった。FITが始まった中で冗談のような低迷である。太陽光は「申請バブル」、風力は「閑古鳥」。どうしてこうなるのか?

拡大FIT法によって太陽光発電は大きく増えている。群馬県内で。

 《おかしな話1》12年7月~13年3月にFIT制度で認定されたのに、昨年6月末時点で発電をしていない太陽光事業が中大規模を中心に4699件あった。うち571件は土地も設備も未決定・めどもなしだった。(土地もない!)。さらに101件は調査に回答さえしなかった。この合計672年が「取り消し検討」の対象になる。

 (ちなみに4699件の内容は、「その後運転を始めた」1049件、「設置を断念」419件、「場所・設備ともに決定」1588件、「場所・設備のいずれかが決定」784件、「場所・設備が未決定だが協議中」187件、「場所・設備とも未決定」571件、「調査未提出」101件。なので問題のある案件はまだ増える可能性あり。)

 《おかしな話2》2013年度中の風力発電の新規導入量が7・3万KWしかないことが分かった。風車の本数でいえばたった35本である。世界では大きく伸びている風力発電だが、日本は取り残されている。

「売電権利」のブローカー

拡大年度ごとの風力発電の導入量。一向に伸びない。(日本風力発電協会)
 これらの話には少し説明がいる。FITは各種自然エネルギーの発電コストを勘案して買い取り価格を決め、導入コスト、発電コストが下がれば買い取り価格も下げることになっている。太陽光は発電コストが高くて買い取り価格も高いが、太陽光パネルの値段は急激に下がりつつある。そこで「買い取り価格が高いうちに認定をもらおう」という業者が殺到した。

 それは「早期に大量の導入をはかる」というFITの狙い通りの動きだったが、予想外の悪い業者もいたのである。認定をとったあと、「工事費が安くなるまで建設を待とう」、あるいは自分で建設するのではなく「高い『売電権利』を転売しよう」とする業者だ。

 倫理上の問題と、制度不備の両方があった。そこで経産省は「認定から発電開始までの期間を決める」「電気の買い取り価格は認定時ではなく発電時にする」「定期的に実態調査をする」といった変更を考えている。こうすれば「枠だけ取って放置する」という業者はいなくなるだろう。しかし、認定時に買い取り価格が決まらないとビジネスの計画は立てられないという難しい問題もでる。

 風力の場合は少し話が複雑だ。風力発電所の建設には時間がかかるため、FIT開始後すぐに急増とはならない。しかし、それを割り引いてもあまりに増えないし、新規の計画もかんばしくないという状況だ。

 風力業界は増えない理由を3つあげて「3K」といっている。(1)「送電線に接続できない」(2)「農地に建てられない」(3)「環境アセスメントに時間がかかる」である。

拡大小水力発電が計画されている水路。こんな小さな水路でも「毎日、1年間の流量」の記録提出を求められた。大きな川を想定した規則を使うおかしな規制の例。長野県内で。
 (1)は、各地域の電力会社が設定する「自然エネルギーの電気受け入れ枠」が極めて小さいということだ。だれかが「ここに風力発電所を建てたい」と思っても、その地域の電力会社が「風力の電気は変動するので送電線への受け入れは無理」といえば、つくれない。いくら風が吹いていても風力発電は増えない。日本全国でそうなっている。

 環境省の2012年の報告書によると、日本の地上風力の導入可能量(潜在量)は全国で1億6582万kWある。日本の現在の総発電設備量の9割ほどにもなる数字だ。そして「現行のFITのもとで、事業者が採算性を確保できる」という条件で絞った数字でもある。北海道が42%(7098万kW)、東北電力管内が32%(5312万kW)と圧倒的に多い。 

「放棄田」でも「優良農地」がある

 これに対して、北海道電力管内の風力発電の枠は32万kWほど。北電は「将来は56万kWにするが、当面はそれでめいっぱい」としている。潜在量とは全く異なる。潜在量が多い東北電力や九州電力でも同様だ。電力会社がときどき新規の風力発電の枠を募集するが、募集枠は極めて小さい。何倍もが入札に殺到し、ほとんどが落選してビジネス意欲を失う。

拡大FITによる自然エネルギーの導入状況。増えているのはほとんどが太陽光発電。昨年10月時点のまとめ。(経産省)

 この状態はFITができる前と変わらない。FITの柱に、自然エネルギーを優先的に送電線に受け入れるという「優先接続の原則」があるが、有名無実になっているからだ。現実は、受け入れの可否は電力会社が決める。その電力会社は一般に自然エネルギーを受け入れるのを嫌がり、自社所有の発電所を使いたがる。

 (2)の「農地転用の難しさ」は、農水省の厳しい規制による。とにかく「優良農地」ならば、そこが「放棄田」(放棄田でも優良農地?)であっても自然エネルギー発電の設備をつくることを許さない。風力は田んぼや畑の隅っこにつくればよく、最小限で6~10メートル四方の土地があれば一本の風車が建つが、それも「NO」だった。さすがに問題になり、今年度の規制改革のテーマとなって少し緩和されたが、適用の手続きは複雑で、実際に農地転用が簡単になるかどうかはまだわからない。

 (3)は、風車建設にかかる環境アセスがとにかく細かくて、3年ほどもかかる。アセスは12年10月に義務化された。太陽光などはアセスが不要。福島事故後、急いで火力発電をつくる必要性があるために大型の石炭火力でもアセスの簡略化が進んでいるのに風力はなかなか進まない。 ・・・ログインして読む
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筆者

竹内敬二

竹内敬二(たけうち・けいじ) エネルギー戦略研究所シニアフェロー

エネルギー戦略研究所(株)シニアフェロー。元朝日新聞編集委員。科学部記者、ロンドン特派員、論説委員などを務め、環境・原子力・自然エネルギー政策、電力制度などを担当してきた。温暖化の国際交渉、チェルノブイリ原発事故、3・11などを継続的に取材。著書は、電力業界が日本社会を支配するような社会産業構造がなぜ生まれたのか、なぜ福島事故がおきたのかを描いた『電力の社会史 何が東京電力を生んだのか』(朝日選書、2013年)。

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