2014年02月24日
ネットや電子技術が発達して、色々な形で仕事の身体的負荷が減った。その恩恵は12年前に病気で身障者の仲間入りをした私にもある。仕事に9割近く復帰している(8分の1の病気休職)のは、まさに技術の恩恵だ。これが1970年代だったら、仕事復帰は果たせていなかっただろう。
しかし、その陰に困った問題もある。本稿では、白黒からカラーへという大きな流れの中で見過ごされがちな問題点取り上げたい。
印刷技術の向上に加え、多くの情報が紙媒体でなくスクリーンで表示されるペーパーレス時代になったことから、いままで白黒で表示されていた図面の多くがカラーになった。学会等での発表スライドはカラーが基本となり、論文でも同様だ。オンライン出版が主流となった関係で、カラー印刷料金(基本投稿料とは別に図1枚当たり数万〜十数万円を著者から徴収していた)が廃止されてきたからだ。
カラー図は確かに直感的で分かりやすいことが多い。線が複数あったり、アメダスのように地図上の各点の値を示す「3次元プロット」だったら特にそうだ。地図上のどこが猛暑・厳寒で、どこが豪雨・豪雪なのか一目でわかる。
しかし、思わぬ落とし穴もある。誰もが思いつくであろう、色覚異常の方々が相対的に不利になるという問題点以外にも、2点ほど科学的見地からカラーの使用に注意が必要だ。それらを以下に簡単にまとめたい。
(1)色覚異常の方々が相対的に不利になる
色覚異常は男性に多い。日本人の場合、男性の4~5%が赤と緑の区別がつき難い(赤緑色覚異常)といわれる。私の同年代の研究者にも一人いて、当人こそ「自分1人のために他の人の素早い理解を損なうケアは必要ない」と語っているものの、それに他の人間が100%甘んじて良いかどうかは別問題だ。例えば折れ線グラフで種類を判別する際、緑を避けるだけで、色覚異常の方にも理解しやすい配色を選ぶことができる。
この程度の配慮ぐらいなら誰でもできるし、より具体的にどのような色を避けるべきかの研究も既にある。
現に一部分野では21世紀に入ってから少しずつ色覚異常の方々への配慮がすすんできた。しかし、学会関係・論文関係は遅れていて、この手の注意喚起を私が聞いたことはない。むしろ白黒で図を出すと「カラーにしろ」というコメントが返って来るほどだ。
もっとも、
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