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ポスト京都は、イギリスの行き方に注目しよう (下)

小林光 慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)

 (上)に続いて、英国の積極的で腰の据わった温暖化対策を報告する。風力発電を大幅に増やす計画については(上)でも書いたが、他の再生可能エネルギーやCO2の分離貯留技術(CCS: Carbon Capture and Storage)についてもイギリスは大変に熱心である。気候変動政策の4番目の柱である。

 低炭素エネルギー供給技術への積極的な投資

 出力を意図的に柔軟に変えられる化石燃料の使用は、出力が変動する特性のある風力などを最大限使用しつつエネルギー需要を満たす上で不可欠であるが、その排気を大気中に行ったのでは、CO2減らしはできなくなる。そこで登場するのが、CCSである。

 幸い、イギリスには、地質時代を通じて油やガスを逃さず貯めてきた北海油田に、その掘削のピークを過ぎてきたために随分と空きスペースが出来てきた。これを使わない手はないというわけであろう。このために、10億ポンド(邦貨1700億円相当)にのぼる競争的な資金が政府から投じられ、実規模での、発電所排ガスからの炭素隔離と貯留のプロセス構築が始まっている。

 CCSだけでなく、低炭素のエネルギー供給に向けては、様々な投資的な取り組みがなされている。例えば、2011年から実施に移されたRHI(Renewable Heat Incentive)である。これは、熱を利用できるグリッドに排熱などを供給する場合に、固定価格で買い上げを保証する制度で、熱版のFITのようなものであるが、我が国には現時点で全く存在しないアイディアである(我が国では、太陽熱の自家消費に関する証書化とその値付けの考えが検討されているが、大いに進め、そして、イギリスのように廃熱融通にまで対象を拡大するべきであろう)。

拡大英国南西部にあるヒンクリーポイント原発。ここに新しい原発2基が計画されている。英国政府は、原発も自然エネルギーと同じ「低炭素電源」として保護し、増やす計画をもつ。(朝日新聞)

 昨年5月に開かれたAll Energy Conferenceで、ディヴィー・エネルギー気候変動大臣は、イギリスにおいて、2010年以降だけに限っても、総額290億ポンド(約5兆円)もが、先に見た風力を始めとした再生可能エネルギーの開発利用に投資され、誘発雇用は3万人規模に及んだことを明らかにした。さらに、今後についても、政府の支援額を増加させ、2020年には、政府の支援額を現在の3倍の75億ポンド(約1.3兆円)に増加させ、2030年には、供給電力に占める再生可能エネルギー起源のものを、現在の11%から30%にまで引き上げる方針を示した(全エネルギー供給に関しては、2020年に15%を再生可能エネルギーからのものにするとの目標が既に設定されている)。

 このような長期的な政策方針の提示も、市場にとって、あるいは個々のビジネスにとって力強い援軍になるのであり、彼我の差を感じざるを得ない。政策の範疇に入れて良いと思われるが、洋上風力の開発許可権限が政府にあって(領海の所有権自体は王室にある)、安定した開発制度を構築できる点も、日本との大きな差である。日本では、そもそも洋上風力の是非を判断できる仕組み自体がない。日本には、イギリスに学ぶべき点は多いと思われる。ちなみに、我が慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは、このところ毎年、駐日イギリス大使館や本国外務省の気候変動対策担当官を招聘して、イギリスの政策について講義を行っていただいているが学生には大人気である。

イギリスの自信を裏付けるのは、環境対策の経済効果

イギリスが、このように元気に地球温暖化対策を進めているのは、我が国とは好対照である。いったい何が動機となっているのだろうか。

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筆者

小林光

小林光(こばやし・ひかる) 慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)

慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)。工学博士。1949年生まれ、慶応義塾大学経済学部卒業。環境庁(省)では、環境と経済、地球温暖化などの課題を幅広く担当。1997年の京都会議(COP3)の日本誘致のほか、温暖化の国際交渉、環境税の創設などを進めた。環境事務次官(2009~11年)時代には水俣病患者団体との和解に力を注ぐ。自然エネルギーをふんだんに利用したエコハウスを自宅にしていることで有名。趣味は蝶の観察。

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