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科学の開放を目指す「オープンアクセス」の落とし穴

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 オープンアクセス(Open Access)とクリエイティブコモンズ(CC)ライセンスの概念が急速に科学界に浸透している。二つは似ているが、同じではない。そして、学術雑誌で進むオープンアクセスには落とし穴がある。そこに落ちないように、私たちは共通認識を持つ必要がある。折しも日本学術会議が来る3月13日に、この問題に関する公開シンポジウムをする。そうした場も生かし、幅広い議論が巻き起こってほしいと思う。

 オープンアクセスとは、きちんとした査読を経た論文を無料で無制限にネット公開することで、要するに世界のどこに住んでいようと図書館の恩恵を受けるようにする、というものである。 一方、クリエイティブコモンズは、ネットを日ごろ使っておられる方なら耳にしたことがあるだろう。インターネット時代にふさわしい著作権ルールの普及を目指す国際的非営利組織が、著作者が自ら「この条件を守れば私の作品を自由に使って良いですよ」という意思表示をするためのツールとして作ったのが「CCライセンス」だ。著作者がCCライセンスをつけて自分の作品を公開しておけば、そこで示された条件を守る限り誰でも自由にその作品を使える。条件とは「作品のクレジットを表示すること」が基本で、オプションとして「改変しないこと」「営利目的に使わない」などを著者が選べる。

 科学研究の世界では、自由な情報の流通がきわめて大事だが、学術論文を読むのは決して自由ではなかった。一般の本と異なり、科学の学術雑誌は完全に限定予約販売でかつ極めて高価で、総合大学や研究機関などの大きな図書館でない限り、関連分野全ての雑誌を購入できないからだ。例えば、

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