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交雑防止へ対策が始まる狭山丘陵のキタリス

米山正寛 朝日新聞記者(科学医療部)

拡大狭山丘陵にある貯水池と、それを囲む水源林。この辺りにキタリスが定着している
 東京都と埼玉県にまたがる狭山丘陵に、本来なら生息していないはずのキタリスが定着している。情報が伝わるにつれて、愛らしい姿を求めて散策や撮影に訪れる人もいるようだ。だが、このキタリスは決して歓迎すべき存在ではないのだ。

 狭山丘陵は面積約3500haで、東京都の東村山市、東大和市、武蔵村山市、瑞穂町、埼玉県の所沢市、入間市の5市1町にまたがる緑地だ。東京都水道局の村山貯水池(多摩湖)、山口貯水池(狭山湖)を囲むように森が広がり、その中にプロ野球・埼玉西武ライオンズの本拠地である西武ドームや西武ゆうえんちが立地し、都立野山北・六道山公園をはじめとする多くの公園も設置されている。

拡大ニホンリス。キタリスとの交雑が心配されている
 この丘陵地帯に本州在来のニホンリスがいたという確実な記録はないという。もともといなかったのかもしれないし、遠い過去に絶滅したのかもしれない。ところが1980年代になって、しばしばリスが目撃されるようになった。98年に交通事故で死んだ2個体のDNAを調べてキタリスと判断できたことから、目撃されているリスは全てキタリスである可能性が出てきた。キタリスならば、おそらくペットとして海外から輸入された個体が放され、繁殖をするようになったのだろうと推定されている。

 キタリスはヨーロッパからロシア、中国にかけてのユーラシア大陸北部に分布するリスの仲間で、北海道にすむエゾリスはその亜種となっている。本州にすむニホンリスはキタリスとは同じ属の別種として扱われているが、両種は遺伝的に近いことから、生息場所が重なるようになれば種間の交雑が起こると心配されている。このため2006年、環境省はキタリスを必要に応じて被害防止のための防除策を実施できる特定外来生物に指定した。

 

拡大キタリス。これは北海道にすむ亜種エゾリス=撮影・米山実里
 狭山丘陵から西へ5kmほど離れた加治丘陵や草花丘陵には、現在もニホンリスがすんでいる。この間には住宅地などがあって、今のところリスの行き来は確認されていないが、道路や庭の緑をたどるなどして、リスが移動する機会がないとは言えない。それにもかかわらず、キタリスの確認から10年以上、特定外来生物指定からも7年程が経過しながら、狭山丘陵が複数の市町にまたがることや、立ち入りの難しい水源林や個人所有林が多いことなどもあって、キタリスに関する全体的な調査やニホンリスとの交雑防止に向けた有効な対策は打たれずにきた。そこで ・・・ログインして読む
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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞記者(科学医療部)

朝日新聞科学医療部記者。「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長などを務め、2018年4月から再び朝日新聞の科学記者に。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

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