メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

ウエアラブル機器の今後を占う 〈下〉

稲見昌彦 東京大学先端科学技術研究センター教授

 ウエアラブル技術の特徴は、「ハンズフリー」「(ほぼ)常時オン」「1人称体験の記録・提示・共有」の三つだと前稿でお伝えした。

人とコンピューターの関係を大きく変えうる

 三番目の特徴である「1人称体験の記録・提示・共有」は、前述のヴァネーバー・ブッシュによるビジョンにおいても指摘されているように、人とコンピューターとのあり方を大きく変えうる可能性を持っている。

 Xerox PARCでチャールズ・シモニーにより指摘され、Apple社が「マッキントッシュ」で目指したWYSIWYG(What You See Is What You Get)というコンセプトがある、これはディスプレーに表示された情報と印刷結果を一致させることを目指し、DTPに大きな影響を与えた。カメラとディスプレー付きウエアラブル機器を頭部に装着することにより、紙のような物体でなく、ユーザーが体験した世界を記録し、追体験し、共有することを可能とするWYSIWYS(What You See Is What You Share)が実現できる。

 スパイク・ジョーンズ監督による映画「マルコヴィッチの穴」は、俳優ジョン・マルコヴィッチの脳の中に入り込み、彼自身が感じた世界を他者が体験できるという不思議な穴をモチーフにした作品であるが、まさにその世界を具現化できることになる。訓練や技術伝承への応用はもちろん可能であるが、2020年の東京オリンピックでは、トップアスリートたちの主観視点を共有し、世界中の視聴者が同時に体験するようなことも実現するかもしれない。また、人間だけでなく、動物の主観視点を共有することさえ可能となろう。

拡大Google Glassを着けたところ

 目に近い位置にカメラがあることは自然なアイコンタクトも実現する。Google Glassで数多く撮影・共有された動画のなかで、筆者が驚いたものの一つが、ユーザーとその子どもとがキャッチボールで遊んでいるシーンである。子どもがときにボールを追いかけ、ときに父親に笑いかける実に自然な表情が収められている。運動会シーズンごとに子どもを撮影するためのビデオカメラが人気商品となるが、撮影者は撮影にかかりきりで応援に集中することができない。Google Glassは直接顔を合わせているような自然な家族の表情を撮影するための最適なカメラともいえよう。

 さらに ・・・ログインして読む
(残り:約1916文字/本文:約2893文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

稲見昌彦

稲見昌彦(いなみ・まさひこ) 東京大学先端科学技術研究センター教授

1972年東京生まれ。99年東京大学大学院工学系研究科修了博士(工学)。マサチューセッツ工科大学客員科学者、電気通信大学教授、慶応大学教授などを経て現職。強化人間、自在化技術、エンタテインメント工学に興味を持つ。光学迷彩、動体視力増強装置など、空想と科学を繋ぐ技術を多数開発。【2017年9月WEBRONZA退任】

 

稲見昌彦の記事

もっと見る