武村政春(たけむら・まさはる) 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)
東京理科大学大学院科学教育研究科准教授。1969年三重県生まれ。1998年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。名古屋大、三重大の助手等を経て現職。専門は生物教育学、分子生物学、細胞進化学。著書に「レプリカ~文化と進化の複製博物館」(工作舎)など多数。【2015年10月WEBRONZA退任】
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
おびただしい数の報道陣が会場からあふれんばかりである。はたしてこの中に、純粋な科学的真実に興味を持っている人間がどれだけいるのだろうか。1月末、あのような大々的な記者発表をしなければこんな大騒動にはならなかったろうにと思いながら、私はPCの前に座っていたが、この会見を見ているうちに何だか非常にやるせない気持ちになってきた。
記者会見を行っている科学者と記者との間のやり取りに、科学者と科学者以外との間に、越えるべき考え方の大きな壁が存在することを、改めて思い知らされたからである。
調査委員会の石井委員長や理研CDBの竹市センター長は、さすがに第一線の科学者らしい的確な表現で質疑応答にも臨んでおられたが、彼らは別に、のらりくらりと言い逃れをしていたわけではない。科学的な見地にたって、言えることと言えないことをきちんと分けて話をしているのである。あれこそまさに科学者の態度であったと、科学者コミュニティーの一員でもある私には思えた。
2日付けの朝日新聞朝刊一面の《解説》の中に、「論文の不正とは別に、STAP細胞が存在することはまだ信じたいという意向がにじむ。」とあるが、そうではないと思う。理研とは利害関係の全くない私だが、たとえ私が記者会見したとしても、石井、竹市両氏のような回答をしただろう。STAP細胞が存在することは「まだ信じたい」のではなく、ほんとうに「わからない」からである。
しかしながら、
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