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温暖化リスクはテロに通じる IPCC第2作業部会@横浜

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、三つの作業部会の報告書を相次いで公表した。10月には統合報告書がまとめられる。煎じ詰めれば「人間活動による温暖化はすでに起きていて、このまま対策を取らなければ、今世紀末には破滅的な影響が予想される」というものだ。地球温暖化に関する科学的知見はこれまでより増えたが、結論に大きな違いはない。1990年から数えて5回目となる今回の報告書(AR5)は、これまでとどこが変わったのか。
第2作業部会の記者会見IPCC第2作業部会の記者会見には多くの報道陣が訪れた=3月31日、横浜市、白井伸洋撮影

 第2作業部会(影響、適応、脆弱性)の報告書は3月末、横浜市で開かれた総会で採択された。「すべての大陸と海洋で影響が表れている」と断定。今世紀末の世界の平均気温が18世紀半ばと比べて4度を超えると、後戻りできない環境の激変を起こしかねないと「警告」した。

 代表執筆者の一人は「これまでは何度上がると何が起きるという予測が中心だったが、今回はリスク管理の考え方を前面に打ち出した」と言う。温暖化による影響や危険性をこれまでより幅広くとらえたということだ。リスクは、気象現象だけで決まるわけではない。人々がどんな場所で、どんな暮らしをしているのか。資産はどんな状況にあるのか。同じ気象現象でも地域や状況に応じてリスクは違ってくる。被害は大きくないが頻繁にあるリスクと、頻度は低いが発生したら影響がとてつもなく大きいリスクの、どちらを優先的に回避するのかという問題もある。どんな温暖化防止策をとるかは、リスク評価と価値判断に基づいて総合的に決めなければならない。

 「費用便益の分析では不十分だ」。英国外務省のサイモン・シャープ・エネルギー気候変動局グローバル戦略的影響チーム長は強調した。温暖化の経済的影響を推定するには、二つの根本的な問題があるという。

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