2014年04月30日
理化学研究所でSTAP細胞論文の調査委員長を務めていた石井俊輔氏が自らの論文に疑惑が浮上し委員長辞任が了承された4月25日。千葉大学では研究不正をめぐる驚くべき記者会見があった。
製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバン(一般名バルサルタン)の効果を調べた臨床研究の論文不正問題で、千葉大学の調査委員会は、「論文の結論に対して疑念を持たれる」として、論文取り下げを勧告する報告書を公表した。
昨年2月、京都府立医大の論文撤回でこの「ディオバン問題」が表面化して1年あまり。ことあるごとに私は「日本の臨床研究への信頼が失われてしまう」と書いてきたが、論文撤回がこれだけ続き、もう何度書いたかわからない。
医学の発展に重い責任を負うべき大学の臨床研究での不正なデータ操作。大学の医師と製薬企業との間のカネと人の深いつながり。売り上げを伸ばすためになりふり構わない製薬企業の営業活動が次々と表面化している。あきれている国民も多いはずだ。
千葉大の場合、昨年12月に発表した中間報告の時点では、「意図的なデータ操作は見いだせなかった」としていた。京都府立医大などで研究への関与が指摘されたノバルティス日本法人の元社員は千葉大ではデータを解析しておらず、解析は大学の研究者が担当したとしていた。
しかし、第三者機関に依頼した調査報告によると、病院に残っていたカルテのデータと論文に使ったデータの不一致や、統計解析方法に問題が明らかになった。データの意図的な改ざんがあったとする証拠は見つかっていないが、調査委員会は「改ざんの可能性を否定することも不可能」と結論づけた。
元社員の関与については、千葉大論文の筆頭筆者が4月になって、統計解析を元社員に依頼していたことを新たに証言した。調査委としても元社員に依頼した可能性が高いと認定。論文には多数の問題点があり、科学的価値も乏しいとして撤回を勧告した。
一連のディオバン問題が世に示したのは、大学と製薬企業との構造的な相互依存関係だ。
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