2014年05月07日
STAP細胞騒動は、月日が経つごとに醜さを増している。STAP細胞発見の論文発表と理化学研究所による盛大な記者会見は、今年1月のことだった。その後、小保方晴子氏による研究不正・捏造容疑が浮上し、理化学研究所調査委員会による小保方氏の研究不正・捏造認定、小保方氏による記者会見と弁護士を通じての理化学研究所調査委員会の研究不正・捏造認定に対する不服申し立て、小保方氏の共同研究者で神戸の理化学研究所(発生・再生科学総合研究センター)副センター長の笹井芳樹氏による記者会見、理化学研究所調査委員会の石井俊輔委員長また複数の委員らの過去の論文に図の切り貼り疑惑の浮上、石井氏の調査委員長辞任、と事態は目まぐるしく動いた。
筆者は、現在進行中の小保方氏と理化学研究所の泥仕合は、研究の世界に留まらない、現代日本が抱える多くの問題点を映し出していると考える。これらの問題点は大きくわけて2つある。ひとつは、小保方氏のような人物、あるいは小保方予備軍は、現代日本社会に多く潜んでいるという問題だ。もうひとつは、日本の国、社会、各種組織(会社、大学、研究所など)が「固い」が、「頑強」でないという問題だ。
この2点について筆者の考えを述べる前に、先ず、筆者は、この問題に関しての利害関係は皆無だということを断っておきたい。小保方氏とは面識もないし、理化学研究所との研究上あるいは運営上の関わりも皆無であり、また日本の各種学会にも全く所属していない。筆者は1985年に米国に渡り、2009年に日本に帰った。その後に思い知らされたさまざまな現代日本社会の問題点が、STAP細胞騒動で集約されて現れたと考えている。
小保方氏は、記者会見の中で、図の切り貼り、論文の主要データの一部をまったく無関係の他の研究データから流用した事実については認めた。しかし、図の切り貼りについては「やってはならないことだと知らなかった」、無関係データの流用については「単なる間違いで意図的(法的な定義に基づいた意味ではなく、日常的に使われている意味においての「意図的」)ではない」と説明した。つまり、ルール上やってはならないことをしてしまったが、ルールを破ろうとして破ったのではないという説明だ。
このような「言い訳」が通用する社会は、この世の中に存在しない。
研究者には
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