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「吉田調書」は特定秘密保護法違反となるか

中村多美子 弁護士(家族法、「科学と法」)

 2014年5月19日、朝日新聞社は、非公開とされてきたいわゆる「吉田調書」に基づく特集企画「吉田調書」を公開した。朝日新聞によれば、「吉田調書」は、福島第一原発事故当時、同原発所長であった故吉田昌郎氏が政府事故調に対して回答した聴取内容をとりまとめた「聴取結果報告書」に基づく記事である。

 吉田氏の聴取結果報告書の入手による報道が、昨年成立した特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)に違反するのではないかという報道もなされている(たとえば、日刊ゲンダイによる元外務相国際情報局長孫崎亨氏のコメントなど)。

 まず、法律家としてはっきり言っておきたいのは、吉田調書は、特定秘密保護法施行後であっても、「特定秘密」などではない、ということだ。これが特定秘密指定されるようではたまったものではない。

 特定秘密保護法では、特定秘密として4つの類型を挙げる。「防衛に関する事項」「外交に関する事項」「特定有害活動の防止に関する事項」「テロリズムの防止に関する事項」である。公開された範囲で見る限り、吉田調書はこのいずれの類型にもあてはまらない。そもそも特定秘密保護法は、第1条を読む限り、保護されるべき特定秘密の情報とは、「我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるもの」である。吉田調書は、公開されている部分を見る限り、到底、本法の特定秘密には該当しないのである。

 吉田調書報道からみえてくる特定秘密保護法施行をめぐる問題は2つある。

 まず、

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筆者

中村多美子

中村多美子(なかむら・たみこ) 弁護士(家族法、「科学と法」)

弁護士(大分県弁護士会)。1989年京都大学農学部入学、翌年法学部に転入学。95年司法試験合格。京都大学博士(法学)。関心領域は、家族法や子どもの権利、そして「科学と法」。09年度から始まった科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センターの「不確実な科学的状況での法的意思決定」プロジェクト代表を務めた。日弁連家事法制委員会委員、大分県土地収用委員会会長、原 子力発電環境整備機構評議員。【2017年3月WEBRONZA退任】

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