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STAP問題 改革委の「解体提言」を支持する

浅井文和 日本医学ジャーナリスト協会会長

 STAP細胞論文問題はなぜ起きたのか?

 私は取材に携わり、理化学研究所の調査委員会の記者会見にも参加した。しかし、捏造・改ざんという深刻な研究不正が起きた理由や、不正が見過ごされた真相について、納得のいく説明が得られず、もやもやしたものが残っていた。

 6月12日に公表された理研の「研究不正再発防止のための改革委員会」(岸輝雄委員長)の提言書で、やっと目の前の霧が晴れた感がある。

 問題を生んだ理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の管理体制や構造的な欠陥が明らかになった。提言書で示されたのはCDBで責任を負うべき人たちの驚くべき無責任さだ。

 STAP細胞論文の筆頭著者であるCDB研究ユニットリーダー、小保方晴子氏に研究データ管理の指導・確認をする立場にある上司の竹市雅俊CDBセンター長はそのような指導・確認をしていないだけでなく「責任を負っていることを認識さえしていない」ということだ。

 論文共著者の笹井芳樹副センター長は生データの検証を全く行わず、「自らの職責を果たさなかった」。論文への疑問が多く指摘されていたにもかかわらず、「STAP現象は有力仮説である」との発言を繰り返した。笹井氏の行動は「成果主義に走るあまり、真実の解明を最優先として行動する、という科学者として当然に求められる基本を疎かにした」で、「厳しく責任が問われるべきもの」としている。

 そして、6月16日、もう一人の共著者である若山照彦・山梨大学教授の記者会見で、「ああ、そうだったのか」である。

 若山氏の研究室で保管していたSTAP幹細胞を第三者機関で遺伝子解析してもらったところ、若山研究室には存在しないマウスからつくられていた細胞であることが明らかになった。若山氏は「STAP細胞があるという証拠はなくなり、存在を否定する結果が次々と出てきている。ただ、絶対にないと言い切ることはできない」と話した。

 理研によると、小保方氏の研究室の冷凍庫には、ES細胞(胚性幹細胞)を意味するラベルの貼られた容器が保管されていた。CDBが容器の中にあった細胞を解析したところ、この第三者機関の遺伝子解析結果の特徴と一致した。

 遺伝子解析の結果だけから断定することはできないが、これまでSTAP細胞とされていたものは、既存の多能性細胞であるES細胞ではないかという疑惑が深まった。

解体して新たな出発目指せ

 このようにずさんな組織運営をしていたCDBに対する改革委の提言は、CDBの「解体」という荒療治だ。解体論に対しては、「やりすぎ」という批判も出ているが、提言書をよく読むと、求めているのは懲罰的に解体するということではない。

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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 日本医学ジャーナリスト協会会長

日本医学ジャーナリスト協会会長。日本専門医機構理事。医学文筆家。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者、編集委員として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。退社後、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。公衆衛生学修士(専門職)。

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