2014年06月25日
上海でのプログラムは、私の簡単な開会挨拶に続いて、台湾からエコツーリズムやパーマカルチャーの専門家、WWF(世界自然保護基金)上海オフィスの幹部などがスピーチを行い、続いて半農半Xでお馴染みの塩見直紀さんによる基調講演で幕を開けた。「ふーん、中国で半農半Xねェ…」という半信半疑の声が聞こえてきそうだが、「半農半X」の名づけ親とされている私自身も、プログラム案を示されたときはその程度の印象だった。ところがどうだろう。塩見さんを一目見ようと詰めかけた若者たちの熱い視線は、ほとんどセレブ扱いと言ってもいい。じつは、塩見さんのデビュー作『半農半Xという生き方』(ソニーマガジンズ、2003年初版)は2006年に台湾で中国語繁体字訳が出版されて12版を重ね、2013年には大陸でも簡体字訳が出たばかりなのだ。
しかし、ふつう日本人がイメージする中国に「半農半X」はどうしても似合わない。農民戸籍が都市部での就職や生活を妨げる社会で、逆に都市出身者があえて農業を始めることなどありえるのか――その疑問を解く鍵が、身を乗り出すように塩見さんの話に耳を傾ける若者たちだった。そう、中国ではいま都市型ライフルタイルの転換、とりわけ有機農業に対する関心が高まっていて、実際に都市近郊や地方へ移住し、自然な農業を試みる人びとが注目の的だという。上海での東アジア地球市民村3日目には、そうした先駆的な農場をいくつか訪問したが、彼らのところにも実習の希望が後を絶たないそうだ。
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