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 2014年3月上旬、「東アジア地球市民村2014 in 上海」と題する会合を開いた。私が設立して運営を預かる市民活動支援のための民間基金、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(abt)が助成部門の一つに設けた「東アジア環境交流プロジェクト」で、3年間の節目となる3日間のワークショップだ。あいにく韓国の関係者は日程の都合がつかなかったが、日中台から延べ350人が集まり、参加者の反応も「準備ゼロ回」という位置づけとしては大成功だった。

地球市民村1拡大「東アジア地球市民村2014 in上海」2日目ワークショップ後の記念写真(日中市民社会ネットワーク提供)
 abtの東アジア環境交流プロジェクトは、日本在住歴の長い中国人研究者や中国からの留学生を中心に、日中市民同士の協働を促進しようとする「日中市民社会ネットワーク」(以下、CSネット)を助成先として、まず私の住む屋久島と、雲南省奥地の三江併流世界自然遺産地域とを結ぶ学び合いから始まった。折しも中国では四川大地震、日本では東日本大震災を経験してまもなく、東アジア地域にふさわしい自然共生型の地域づくりが共通の課題となった。エコツーリズムや環境教育、生態系保護、自然エネルギーなどの関連分野から相互訪問とネットワークの輪が広がるにつれて、世界遺産地域に限定する必然性も薄れ、日中韓台の人びとが「国」を背負わずに各種の環境課題を持ち寄ったり、具体的な取り組みで力を合わせたりできる継続的な場をつくることへと重点が移っていった。そんな試行錯誤の一区切りに、次の展開に向けた橋渡しとして「東アジア地球市民村」のテスト開催に漕ぎ着けたのだ。

 上海でのプログラムは、私の簡単な開会挨拶に続いて、台湾からエコツーリズムやパーマカルチャーの専門家、WWF(世界自然保護基金)上海オフィスの幹部などがスピーチを行い、続いて半農半Xでお馴染みの塩見直紀さんによる基調講演で幕を開けた。「ふーん、中国で半農半Xねェ…」という半信半疑の声が聞こえてきそうだが、「半農半X」の名づけ親とされている私自身も、プログラム案を示されたときはその程度の印象だった。ところがどうだろう。塩見さんを一目見ようと詰めかけた若者たちの熱い視線は、ほとんどセレブ扱いと言ってもいい。じつは、塩見さんのデビュー作『半農半Xという生き方』(ソニーマガジンズ、2003年初版)は2006年に台湾で中国語繁体字訳が出版されて12版を重ね、2013年には大陸でも簡体字訳が出たばかりなのだ。

地球市民村3拡大崇明島で自然農法に取り組む賈瑞明夫妻も塩見直紀さんの愛読者(朱惠雯さん提供)

 しかし、ふつう日本人がイメージする中国に「半農半X」はどうしても似合わない。農民戸籍が都市部での就職や生活を妨げる社会で、逆に都市出身者があえて農業を始めることなどありえるのか――その疑問を解く鍵が、身を乗り出すように塩見さんの話に耳を傾ける若者たちだった。そう、中国ではいま都市型ライフルタイルの転換、とりわけ有機農業に対する関心が高まっていて、実際に都市近郊や地方へ移住し、自然な農業を試みる人びとが注目の的だという。上海での東アジア地球市民村3日目には、そうした先駆的な農場をいくつか訪問したが、彼らのところにも実習の希望が後を絶たないそうだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

星川 淳

星川 淳(ほしかわ・じゅん) 作家・翻訳家、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト代表理事

1952年東京生まれ、作家・翻訳家。一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト代表理事。82年より屋久島在住。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの前事務局長。著書に『タマサイ』(南方新社)、『魂の民主主義』(築地書館)、訳書にP・アンダーウッド『一万年の旅路』(翔泳社)、共著に坂本龍一監修『非戦』(幻冬舎)など多数。 著者サイトはこちら。アシタノアシアト  【2016年5月WEBRONZA退任】

 

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