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夏至に雪が積もった!スウェーデンのビックリ天候に異常気象を考える

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 私の住むスウェーデン国キルナ市では、夏至前の一週間毎日雪が舞い、6月20日未明と21日未明は積雪となった。まさに夏至の積雪である。夏至前後1週間の平均気温は4度、最高10度、最低氷点下3度。雪が降っているのだから当然とはいえ、例年を大きく下回った。

 

 キルナ市は北緯68度の北極圏内にあるが、私が24年前にこの街に来てから、6月中旬以降の積雪は1994年6月16日以来2度目に過ぎなく、20年前の雪も積もる先から融けたため、写真のような雪化粧にはならなかった。夏至の積雪に至っては、新聞によるとスウェーデン全体でも37年ぶりだそうだ。要するに、地球温暖化とは裏腹に、異常に寒いのである。

 世界的に寒かった1970年代と比べれば、地球温暖化の進んだいま、6月に雪が積もるのは想定外のことだ。そのくらい珍しいが、これを単純に「夏至にもかかわらず雪が積もる異常気象」と言ってしまうには抵抗がある。というのも、キルナ市の気候を端的に説明する際「白夜の夏至に雪が積もることがある町」と説明すると分かりやすいからだ。この説明の根底には、夏至の雪が決して異常でなく、自然現象につきものの変動かもしれないという感じている私自身がいる。つまり、今回の雪を異常というべきか、起こりうる範囲なのか、判断に迷うのだ。

 この迷いは、自然現象における異常をどう理解するか、何をもって異常気象を「異常」と看做すべきかという問題に帰結する。火曜日に三鷹市を襲った雹(ひょう)にしても同じ問題を抱える。本稿ではこの問題を考察したい。

温室効果では異常寒波の説明は難しい

 数十年に1度の寒波や竜巻があったり、大型台風の数が多かったりする度に、「異常気象」と騒がれ、更には「地球温暖化と関係があるのでは」という意見が湧いて出る。そして地球温暖化の過程で異常気象が増えるという予測が計算機シミュレーションで得られたというニュースが時折流れる。しかし、それらのほとんどは短絡だ。というのも、

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