2014年07月04日
文部科学省が世界各国に火星有人プロジェクトを呼びかけるというニュースが5月末に流れた。文科省が発信し、大臣の記者会見でも言及された。
長らく火星研究に携わる者として、文科省が火星に目を向けてくれるのは嬉しい。しかし、今回のニュースには戸惑った。日本で進行中の火星探査計画と無関係な文脈で出され、しかも文科省が発信するのに相応しくない内容の薄さだったからだ。
火星探査に関しては、日本には20年以上の積み重ねがある。1998年に打ち上がった火星探査機「のぞみ」のプロジェクトは1991年に始まり、のぞみ失敗後も金星探査機「あかつき」を打ち上げ、今は火星着陸計画を多くの研究者が模索中だ。その関係者に幾人か当たったが、文科省の発信を事前に知っていた人はいなかった。
いかにこの種の「展望」「目標」が歓迎すべきものだと分かっていても、火星関係者を事実上無視して内容の薄い話が出るのは、科学の地道な発展にはマイナスだ。最悪、国民が科学計画の将来を信じなくなる危険すらある。
「内容が薄い」と書いたが、それは具体的な手続きが見えないということだ。本気で世界各国への呼びかけ人になる場合、予算面と技術面の貢献が不可欠である。しかし、その展望がない。
米国では将来目標として、火星有人探査が何度も話題となっては棚上げにされていった。その理由は技術的な問題ではない。
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