2014年07月14日
STAP細胞の論文が7月2日に撤回された。
論文不正の疑惑が発覚したとき、『科学研究者の事件と倫理』(講談社、2011年)などの著書がある白楽ロックビルお茶の水女子大学名誉教授に取材をしたいと思った。体調不良とのことで受けていただけなかったが、幸い健康が回復して実現。ここに研究倫理の専門家は今回の件をどう見ているかをお届けする。
白楽さんは、基礎生物学(生化学・細胞生物学)と研究倫理の両方を専門とする。「そのような人は日本では多分私だけでしょう」。STAP細胞を語っていただくのにぴったりの方だけに、あまたのマスコミから取材依頼、出演依頼を受けたが、すべて断ってきた。ついにWEBRONZAに初登場、である。
白楽:日本では勘違いしている人が多いのですが、研究倫理の「倫理」は道徳や高潔といったモラル(moral)ではありません。英語はエシックス(ethics)で、研究という職能の規範、ルールです。これは家庭や社会生活で身につけられるものではなく、大学院や研究室で学ぶものです。
――確かに倫理という日本語は意味がとりにくい。昔、学校で習った「倫理・社会」の印象が強く、日常生活とは遊離したものという印象があります。ぼんやりと「守らなければいけないこと」「でも、そうそうは守れないもの」といったイメージで捉えられているのではないでしょうか。私は「人としての道」というように捉えていました。なるほど、モラルとは違う、仕事をする上でのルールと言っていただくとイメージがはっきりします。
白楽:私は、リサーチエシックスは研究規範と呼ぶ方がいいと考えています。研究規範は、研究者という職能集団の中のルールです。研究ノートは詳細に書く、データのねつ造や改ざん、文章の盗用はしてはいけないなど、たくさんあります。研究規範の知識やスキルがなければ研究者失格です。
――小保方さんは、研究規範を身につけていませんでした。
白楽: それは
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