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 北海道電力が全国に先駆けて電力料金の再値上げ(家庭用17.3%)を申請した。昨年9月の値上げに続くものであり、これにより北海道電力の家庭用電力負担は全国で最高となる。1月千円の増加で、標準家庭で8494円、オール電化の負担は3割増となる。漁業、農業、産業への影響も深刻である。道内自治体も照明、地下鉄、ロードヒーティングなど負担増を強いられる。

 北海道電力が再値上げを申請するに至ったのは、泊原発の再稼働審査が遅れているためであるとされている。しかし今回の再値上げは、泊原発の来年秋から再来年春にかけての再稼働を前提にした計算に基づくものであり、その意味で今回の再値上げは、「原発の再稼働とセット」である点が重要である。

 何よりも明確にしなければならないのは、ここに至った北海道電力の判断の甘さと経営の責任であり、原発さえ再稼働すれば問題は解決するという長期的展望の欠如である。

 高い原発依存が指摘されていた

 思い起こせば、1990年代に泊原発3号機増設問題がおき、それをめぐり北海道にエネルギー問題委員会が設置され、私も参加して2年以上にわたり議論が行われた。そのなかで北海道電力の原発依存度の高さが問題となった。日本の10電力のなかで、天然ガス火力発電もなく、東京電力の10分の1の経営規模で高い原発依存度の問題が指摘され、再生可能エネルギーの利用拡大も提起されたが、結局3号機は設置許可され、2009年から稼働を始めた。今回の事態は、当時我々が指摘した問題点が残念ながら正しかったことを示している。

 原発の再稼働問題は、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故が起き、その余波を受けたものであるという意識が北海道電力には強い。しかし、北海道電力自身も泊原発1号機と2号機が1993年の北海道南西沖地震(奥尻島の津波被害)による津波の影響を受け、津波の引き潮で原子炉が冷却できなくなる寸前までいったのである。

 これは私が北海道電力の幹部から直接聞いた話である。その教訓を生かしていれば、地震・津波への対策が強められ、福島第1原発の事故も防ぐことができた可能性があるが、それを怠ったのである。その責任は国の安全規制と電力会社自身にある。また電力会社は国の原子力・エネルギー政策に従ってきたのだから、国が面倒をみるべきだという「持たれあい」の構造も問題の背景にある。

 さきにも述べたように、問題は「再値上げか再稼働か」という形で提起されているのではなく、「再値上げと再稼働」がセットで提起されているところにある。再稼働に反対ならば再値上げを認めろという選択肢ではないのである。

 再値上げの原因とされる石炭、石油などの化石燃料代金は、日本は世界的にも高めの水準で購入しており、経営合理化の努力が問われるのである。今回は、電力各社のうちで、東京電力、東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力、四国電力は、経営合理化のなかで、原発ゼロ稼働でも黒字を出しているのである。

甘い「原発さえ動けば……」

 泊原発の再稼働について、北海道電力の見通しは極めて甘いといわざるをえない。3号機の再稼働の資料を、炉心冷却のループのシステムが全然違う1号機と2号機の申請資料に流用して、田中俊一原子力規制委員会委員長から「代替受験」だと批判されて、審査を後回しにされた(2013年7月24日)。基準地震動を確定するための地震データの収集も遅れている。北海道電力は東京電力の10分の1の経営規模で3基の原発を持ち、原発依存度が高すぎる割には、地震・津波・周辺環境に関する専門家は社内にほとんどおらず、外部のコンサルタントに頼り、肝心の原発の運転そのものについても、メーカーの三菱重工だよりであるといわれている。

 原子力規制委員会の審査の進行にもよるが、他の電力会社と比べても、北海道電力の体制は見劣りがし、現在審査申請がされているものの最後になる可能性が強い。

 現在、泊原発では、地震・津波対策として多額の費用をかけて設備の増強、防潮堤の建設が行われ ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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