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ウクライナ危機の隠された恐怖:原発への誤爆を防げるか

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 ウクライナ危機には、近年のイスラム圏の内戦(アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、マリ等)や旧ユーゴの内戦にない面がある。それは先進工業国の内戦だということだ。

 ウクライナは、旧ソ連の中核国として東側陣営の技術や工業生産を引っ張って来た。たとえば、先進国の名誉ともいえる宇宙クラブ(人工衛星を自力で打ち上げる能力)は旧ソ連時代に獲得していて、そのためのロケットを百機以上製作・発射している。科学技術教育も高度だ。国の高等教育のレベルは平均的な留学生の基礎知識をみれば概ね分かるが、1990年代後半に私の属するスペース物理分野でスウェーデンへやってきたウクライナ人留学生達の優秀さには舌を巻いたものだ。

 特に東部は旧ソ連の中心モスクワに近いこともあって、ウクライナの中でも鉱工業の進んだ地域だ。鉱工業の進展具合は平均所得に反映されるが、地図に示すように東部は西部より遥かに裕福で、その差は年々広がっている。特に今回の紛争の中心地であるドネツク州(地図の最も赤い2州のロシアに近いほう)はキエフ市特区を除いて平均所得が一番高い。つまり紛争は、ウクライナでも一番鉱工業が進んで裕福な「先進地」の帰属をめぐった争いなのだ。キエフ政権がドル箱である東部の分離を認めないのも当然だし、その鉱工業発展を陰から支えたロシアが東部をそのまま西側に渡したがらないのも当然といえよう。

先進国の内戦が持つ2つの危険

 ここまで工業や科学技術の発達した地域の局地紛争は史上初めてと言って良く、それ故に今までにない危険が加わる。一つは、先月のマレーシア航空撃墜事件で表沙汰になったように、使用される武器が高度になって「末端の暴走」で甚大な被害が起こりうることだ。高い教育レベルゆえに高度な武器も両軍の末端レベルで扱えるからだ。

 かつてウクライナが保持していた原爆は20年前に米ロの圧力で廃棄されており、今回の紛争で間違って使われてしまう危険はないが、通常兵器は分からない。たとい外国からの武器提供がなくとも、ウクライナには危険な兵器を生産する軍事工業があり、供給も使用錬度も他の国の内戦に比べて遥かに高くなりうる。

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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