2014年08月29日
専門家がいくら頑張ってもSTAP細胞はできなかった。
8月27日午後、多数の報道陣が集まる中、東京で理化学研究所の記者会見が開かれた。
STAP細胞の検証実験を進めてきた理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の相沢慎一特別顧問と丹羽仁史プロジェクトリーダーが検証の中間報告として明らかにしたのは、論文に沿って実験をしても、これまでのところSTAP細胞ができなかったことだ。
丹羽氏は幹細胞研究の第一人者とされ、小保方晴子CDBユニットリーダーとともに英科学誌ネイチャーにSTAP細胞論文を投稿した共著者だ。その丹羽氏が研究実施責任者となって検証してもできないということだ。
記者会見での説明によると、検証実験では論文に記載された手順に従って、マウスの脾臓(ひぞう)からリンパ球を取り出し、これを塩酸の弱酸性液に浸してSTAP細胞を作ろうと試みた。22回試みたものの、細胞の多能性を示す証拠は1回も得られなかった。
多能性の目印とされるのが緑色に光る蛍光だ。
緑色に光る細胞は1月に開かれたSTAP細胞論文の記者会見をはじめ、STAP細胞の象徴のようにテレビのニュースでも繰り返し映し出されてきた。
緑色の蛍光が目印となる理由は、Oct3/4という未分化な幹細胞特有の遺伝子が働くと緑色の蛍光を発するようにした人工遺伝子を実験に使ったマウスにあらかじめ組み込んでいるからだ。
Oct3/4が働いていれば、胚性幹細胞(ES細胞)のような多能性をもっているかもしれないことを示す。
ちなみに、山中伸弥・京都大教授がiPS細胞を作った時に用いた4つの遺伝子、いわゆる「山中因子」のひとつがOct3/4だ。
マウスに組み込まれている人工遺伝子には緑色蛍光たんぱく質(GFP)遺伝子が入っている。GFPによる蛍光は波長が決まっていて、純粋な緑色の蛍光を発する。緑色蛍光を観察するフィルターで見ると、緑色に見えるが、赤色のフィルターで見ると蛍光は見えない。
ところが、この検証実験で弱酸性液処理した細胞では、緑色の蛍光が見えることがあったが、同時に赤色のフィルターでも蛍光が見えた。
丹羽氏はこの現象をGPF特有の蛍光ではなく「いわゆる自家蛍光とか非特異的な蛍光」と説明した。つまり、Oct3/4が働いているという証拠にはならない。
さらに、細胞内での遺伝子の働き方を解析しても、Oct3/4の有意な発現上昇を検出することはできなかった。
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