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汚染土の中間貯蔵施設は「永久貯蔵施設にすべし」という地元の声

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 福島県に汚染土の中間貯蔵施設を受け入れると佐藤雄平知事が表明したとき、持ち出した条件の一つが「30年以内に汚染土を県外で最終処分する法案の成立」だ。いったん福島第一原発に近い大熊町や双葉町などで貯蔵はするが、30年以内に県外に持って行ってほしい。それを福島県として国に求めたわけだ。しかし、福島県民の中にはこの要求に異議を唱える声もある。福島県三春町の福聚寺住職で芥川賞作家の玄侑宗久さんは「私の周りでは永久貯蔵施設をつくるべきだという意見が優勢だ」と語った。

玄侑宗久さん

 玄侑さんは1956年三春町生まれ。慶応大学中国文学科を卒業し、さまざまな職業を経験、2001年に「中陰の花」で芥川賞を受けた。08年から福聚寺住職となり、東日本大震災が起きた後には五百旗頭真防衛大学校長が議長になった復興構想会議の委員を佐藤福島県知事や村井嘉浩宮城県知事、作家の内舘牧子さんらとともに務めた。

 地元紙「福島民報」の「日曜論壇」には04年から定期的に寄稿している。大震災から間もない11年5月1日に掲載された「急げど慌てず」と題されたコラムでは、「私自身の提案も拙速に過ぎたと反省する点がある」と書き、ヒマワリやナタネをまいて土中のセシウムを吸い上げようという提案を「早計だった」と省みた。「今の福島県内の放射性物質は、まだ表土から1~2センチの所にあるらしい。表土を剥ぎ、あるいは生えてきた雑草を抜くと、ほとんど取り除かれるというのである」と、ヒマワリの除染効果は期待できないことを伝えた。

 実は農水省がヒマワリやナタネが土壌の浄化につながるかの実証実験を進めると明らかにしたのは掲載日の6日後だ。その後、ヒマワリを植える運動は全県に広まっていく。しかし9月15日、農水省は「ほとんど効果がないとわかった」と発表したのだった。それを見通した情報収集力と先見性、そして自らの提案にもかかわらずいち早く撤回した勇気と誠実さに頭が下がる。

 その玄侑さんが今年9月11日、インドネシアやベトナムの記者たちを前に講演した。世界科学ジャーナリスト連盟が実施するアジアの科学記者養成プロジェクトSjCOOP Asiaの一環として34人が海外から三春町にやってきたからである。

 福島県の現状や問題点を語る中で、最後に言及したのが中間貯蔵施設だった。

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