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2014年も的中するか?!ノーベル医学生理学賞の大胆予想

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 今年もいよいよノーベル賞発表の時期がやってきた。医学生理学賞は10月6日に発表される。昨年のちょうどこの時期に筆者は2013年ノーベル医学生理学賞を予想し、それが的中した。さて、今年はどうか。昨年に引き続き、大胆に予想してみる。

 ズバリ、今年のノーベル医学生理学賞は「遺伝学の分野」に与えられるであろう。近年、数多くの遺伝病の原因遺伝子が次々と発見され、個人の全遺伝子情報も短期間で比較的低コストで読み取れるようになった。また、個々人の遺伝子情報を把握することで、個々にとって最適な健康管理、疾患予防や治療を行う「パーソナライズド・メディスン(個別化医療)」という概念も提唱され、徐々に普及し始めた。薬局でキットを買って自分でできる遺伝子診断も登場している。さらに、それらに伴う倫理問題の議論や、その議論をふまえた適切な法整備も、各国で重要課題のひとつとして認識されつつある。

 このような、遺伝情報の読み取り、そしてその遺伝子情報解析による「個別化医療」は、現在では、われわれの社会へ大きく貢献するに至っており、それに関連する様々なビジネスも立ち上がり始めている。したがって、このような「ゲノム産業」(ゲノムとは、遺伝情報全体を表す用語)を可能にした遺伝子情報解読技術の根本原理を、20世紀後半に提唱した2人に今年のノーベル医学生理学賞が授与されるであろうと筆者は予測する。

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 これまで、遺伝学の分野は医学・生理学へ大きく貢献してきており、いくつかの遺伝学分野の発明・発見にノーベル医学生理学賞が与えられてきた。20世紀前半(1944年)に、Oswald Avery(オズウォルド・エイブリー)らにより細胞の核内にあるDNAという物質が遺伝子そのものであるという発見がなされた後、20世紀半ば(1953年)にJames Watson(ジェームス・ワトソン)とFrancis Crick(フランシス・クリック)が、DNAは二重らせん構造であると突き止め、遺伝情報がどのようにコードされ、それがどのように子孫へ受け継がれているかという原理を提唱した(2人は1962年にノーベル医学生理学賞を受賞)。

 それ以来、DNAの構成物質であり遺伝子情報を記述している塩基配列(つまり遺伝子情報のアルファベット)の読み取り方法が、Frederick Sanger(フレデリック・サンガー)と Walter Gilbert(ウォルター・ギルバート)により独立に発明され(2人は1980年にノーベル医学生理学賞を受賞)、現在では、次世代シーケンサー(塩基配列読み取り機)という機械により、高速で比較的安価にDNAの塩基配列を読み取ることが可能となっている。

 また、2000年には、Francis Collins(フランシス・コリンズ)の率いる米国国家プロジェクトチーム(その他数多くの財団も資金を寄付)、またCraig Venter(クレイグ・ベンター)率いる民間企業Celera(セレラ)がそれぞれ独立に、ヒトの全塩基配列(実際には約83%で、その後数年かかって残りの20%弱が完了された)の読み取りを完了し発表した(論文は2001年に発表された)。

 しかし、ヒトの全塩基配列が明らかになったとしても、その配列が何を表現していて、それらがどういう意味をもっているのか、またそれらの何処がどのように変化するとわれわれの生体機能へ影響が出るのか、といったことを「解読」するのは大変困難な作業であった。

 「個別化医療」の実現には、革新的な「遺伝子情報解読技術」の開発が必須だ。この技術革新のもととなる原理を、20世紀後半に提唱したのが、David Botstein(デイビッド・ボッツティン) とEric Lander(エリック・ランダー)である。今年のノーベル医学生理学賞はこの2人に授与されるであろうと、筆者は予測する。

 David Botsteinらは、 ・・・ログインして読む
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筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

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