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慶応から「日本版NIH」理事長 託された医療研究改革

浅井文和 日本医学ジャーナリスト協会会長

 日本の医療研究の舵取り役を果たすのは誰なのか。

 この数カ月間、大学医学部などの研究者が注目していた人事が10月31日、決まった。

 来年4月に設立される独立行政法人「日本医療研究開発機構」(AMED)の初代理事長として、慶応義塾大学医学部長の末松誠氏(56)が指名されることが閣議で了解された。

行動力を期待され私大から理事長

 AMEDはもともと米国立保健研究所(NIH)をモデルにした「日本版NIH」として構想された。

 安倍晋三首相が主導する成長戦略の目玉、健康・医療分野で研究開発を担う。

 文部科学省・厚生労働省・経済産業省が別々に進めてきた研究を統合して、治療法の開発を待っている患者に役立つ実用化につなげることが期待されている。安倍政権は末松氏に新組織の命運を託した。

 この人事は、注目していた人たちからは、ちょっとした驚きをもって迎えられた。

 これまで、国の科学技術政策を左右する重要な役職には東京大学などの旧七帝大関係者が指名されるのが常だった。

 たとえば、国の科学技術政策をリードする役割を担うとされている「総合科学技術・イノベーション会議」(議長=安倍首相)の有識者議員は現在7名いる。このうち企業出身の議員3人を除く4人は、大阪大総長、元東北大教授、東北大教授、東京大教授という顔ぶれだ。

 実際、AMED理事長に関しても、旧七帝大出身者で「この人が候補」と噂されていた人もいた。しかし、ふたを開けてみれば私立大からの起用になった。

 政府の健康・医療戦略推進本部を担当する甘利経済再生相は、起用の理由を「末松氏は重鎮でありながら一番若い方。柔軟性、行動力など総合的に判断して適任」と記者団に語っている。若さと行動力を期待されての起用であったことは間違いない。

ガスバイオロジーのパイオニア

 末松氏とはどのような人物なのか。

 慶応大関係者によると、学生の頃から統率力に長けた人物として一目置かれていたという。

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