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エレクトロニクス産業の栄枯盛衰を鮮やかに読み解くテクノロジーの新視点

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

 「テクノロジーとは何だろう?」

 半導体技術者を16年続け、その後も10年以上コンサルタントや新聞・雑誌の記事執筆を通して、テクノロジーに関わっているせいか、このような問いを折に触れては思い出して自問自答している。

 ウィキペディアには、「科学的知識を個別領域における実際的目的のために工学的に応用する方法論」などと書いてある。何となく分かったつもりにはなるが、腹の底から納得しているとは言い難い。

 そのような時、ピーター・ティール著『ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)を読んで、思わず膝を打つ表現を見つけた!

 ピーター・ティールは、電子決済システムPayPallの共同創業者で、現在はスタートアップ直後のベンチャー企業に自己資金を投資する、いわゆるエンジェル投資家として名高い。その投資先には、「すべてのクルマを電気自動車にする」という壮大な目標を掲げている米テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスクが2002年に起業した、ロケットの製造開発会社「スペースX」も含まれている(WEBRONZA 2014年10月14日)。

拡大
 ティールによれば、未来の進歩の形は二つあるという(図1)。

 一つは、成功例をコピーする水平的進歩または拡張的進歩であり、1をn(=複数個、ひいては多数という意味)にすることだ。ティールは、マクロレベルの水平的進歩を一言で表すと「グローバリゼーション」になると言う。そして、中国はこれを国家ぐるみで行っていると指摘している。

 もう一つは、新しい何かを行う垂直的進歩または集中的進歩で、つまりゼロから1を生み出すことであり、これを一言で表すと「テクノロジー」になると、ティールは言う。

 「1 to n」がグローバリゼーションで、「0 to 1」がテクノロジー、何と分かりやすい表現だろう。私は大いに腑に落ちた。

 さらにティールは、「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけれど、実はテクノロジーの方が遥かに重要だ」と主張する。なぜなら、「資源の限られたこの世界で、新たなテクノロジー(つまり「0 to 1」)なきグローバリゼーションは持続不可能」だからだ。

 「0 to 1」および「1 to n」という視点で、日本のエレクトロニクス産業を見てみると、

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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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