初代理事長に就く末松誠氏に聞く
2014年11月27日
日本の医療研究はどう進むのか。
医療研究の司令塔として来年4月にスタートする独立行政法人「日本医療研究開発機構」。初代理事長に末松誠・慶応義塾大学医学部長(56)の就任が決まった。
新しい機構は米国立保健研究所(NIH)をモデルにした「日本版NIH」とも言われてきた。しかし、NIHが約3兆円の予算規模で、国立がん研究所など自前の研究所を持つのに対し、機構は約1200億円(2014年度予算ベース)で自前の研究所はない。
文部科学省・厚生労働省・経済産業省の予算と人材を持ち寄った寄り合い所帯という印象も否めない。3省がばらばらに進めてきた医療研究をひとつに束ねて新薬開発など実用化につなげることができるのか。末松氏の手腕が問われている。
注目の末松氏にインタビューして、抱負を聞いた。
――機構の初代理事長を打診されて迷いはなかったですか。
大学を去るのはつらいけれども、それでも引き受けないといけないと思いました。
研究者の立場として、日本の制度的問題を私なりに理解していました。それを根本的に直すチャンスにもなるだろうと。この機構が求めているのは日本の基礎研究が本当に人類のために役立つようにする尊い仕事。誰かがやらないといけない。自分にできるかは分からないけれど挑戦しようという気持ちです。
――機構は「日本版NIH」とも言われましたが、米国のNIHに比べると予算規模ははるかに小さいです。
NIHに学ぶべきは、資金の大きさよりも研究を評価するレフェリーの公正さです。若い一線の研究者がレフェリーとして他の人の研究を評価します。おかしな評価をするレフェリーは脱落していきます。日本がどこまで迫れるかですが、この機会にやらないといけません。
日本では経験を積んだ年配の先生がずっと一つの分野を担当する仕組みになっていないか。レフェリーを公正に交代して、若手をもっと登用する。若手研究者に1年でも2年でもいいからレフェリーとして評価システムに参加してもらいたいです。若いうちに他人の研究を見ることで、触発されることもあり貴重な経験になります。
また、基礎研究、橋渡し研究、臨床研究と進むにつれて評価の視点が変わっていきます。段階ごとに最適なレフェリーを選んでいくことが非常に大事です。
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