大学はジャングル、WINDOWを新たな指針に
2014年12月08日
この10月から京都大学の総長として働いている。立候補したわけではなく、学内の教職員の意向投票によって候補に選ばれ、学外委員を含む選考会議によって推挙された。寝耳に水の出来事と言っていい。それまで私はアフリカの熱帯雨林でゴリラを追跡し、類人猿の視点から人間社会の由来を探るという研究を行ってきた。理学研究科長を2年間務めたことはあるが、大学運営はずぶの素人である。だから、ある新聞はこの人事を「現場で汗水流して働いていた技術者を突然社長の椅子に座らせたようなもの」と報じた。確かにその通りだと私も思う。
しかし、この2か月新しい執行部を率いて大学経営の現場を歩いてみると、何とかやれそうだという気持ちになってきた。それは大学がアフリカのジャングルによく似ているからである。
ジャングルには多様な生物がそれぞれ独自のニッチを構えて共存し、複雑な関係を保ちながらひとつの生態系を作っている。豊富な太陽の光と水によってその養分が作られ、それは様々な生物に生産物として循環されて大地や大気中に吸収される。大学にも多様な学問分野があり、専門家が独自に研究をしている。それぞれに教育研究費が与えられて、学際的なプロジェクトが展開し、成果が発表されて人材が育成される。まるでジャングルの生態系のようなものだ。どの分野が欠けても、生態系は不調をきたす。
要は、それぞれのニッチ(学問分野)に君臨する猛獣たちの暮らしをよく理解し、それぞれの能力を最大限に発揮させること。つまり、総長の仕事は猛獣使いであると気づいたのである。
そこで私は、
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