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2030年までに40%削減、EUの新目標

ブリュッセルで開かれたEEB会議の報告

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 12月はじめ、リマでCOP20(気候変動枠組条約第20回締約国会議)が開催された。それに先立ち、EUは10月23日、24日に開いた欧州理事会(ブラッセル)において、2030年までに1990年比で、域内の温室効果ガスの排出量を「最低でも40%削減する拘束力のある目標」を支持することを決めた。

 EUとして最も費用効率的に目標を達成するため、ETS(欧州連合排出量取引制度)セクターから43%、非ETSセクターから30%削減する(2005年比)。これを裏付けるシナリオ分析もある。

EEBの40周年記念シンポジウム拡大EEBの40周年記念シンポジウム
 この欧州理事会決定では、2030年の再生可能エネルギー割合(1次エネルギー比)は最低でも27%で、省エネ指標も27%削減という目標は「拘束力のある国家目標となるものではない」とされた。

 この背景は、北欧やドイツのように再生可能エネルギーを拡大している国々と、ポーランドや旧東欧諸国のように石炭資源を依然として重視する国々との妥協の産物であるという見方もできる。しかし省エネが進めば、再生可能エネルギーの比率が高まることも期待できる。

 エネルギー安全保障のうえでも、省エネのために熱分野が独自に重視され、かつ再生可能エネルギーの増加も引き続きEU全体で拡大する目標である。EUのエネルギー総局などでの聴き取り調査によってもこのことは確認できる。

 ここで強調すべきは、石炭火力発電などからの大気汚染対策と、温室効果ガス削減が共同して進められる可能性と必要性があるということである。12月1日、2日にブラッセルで開催されたEEB(European Environmental Bureau,ヨーロッパの環境NGOの連合体)の40周年記念シンポジウム(400人)に参加して、このことを強く感じた。

 ヨーロッパ環境庁(コペンハーゲン)が最近公表した報告書(Cost of air pollution from European industrial facilities 2008-2012, an updated assessment,2014)によれば、14325施設のうち147施設(1%)からの被害コストが全体の約半分を占め、そのうちトップ29施設は石炭火力発電所であるという(ドイツ、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア)。

 これらが、NOx、SOx、NH3、PM、CO2、重金属などの主要な汚染源となっている。実際にヨーロッパに滞在してみて、自動車の排気ガスも含めて、スモッグの発生など、大気の状態がよくないことは実感できる。温室効果ガス削減を通じた気候変動対策は、大気汚染を改善し、人間の健康を守るうえで大変重要な課題であり、今回の会議を通じて強調されていた。

 もう1つの重要課題は、資源生産性の向上、循環経済の推進である。日本などでも進められてきた循環型社会構築よりも、包括的な枠組みを作り、世界全体の人口増加のなかで、人口密度の高いヨーロッパにおいて、資源を有効に使い、雇用を生み出し、競争力を高めるという経済戦略である。

 しかし現在、EUは新理事会への移行時期であり、新たな環境委員会の委員長(ベッラ氏、マルタ出身)は選出されたが、先行きにやや不透明なところがある。

ポトチェック氏。右。EU環境委員会の前委員長拡大ポトチェック氏。右。EU環境委員会の前委員長
 前の環境委員会(2010-2014年の5年間)の委員長であったヤネッツ・ポトチェック氏(スロベニア出身、経済学博士)が行った「変革は必要か」という記念講演は大変教訓に満ちている。それによれば、金融危機に対処していくことが必要であるが、グローバリゼーションの問題に対処し、競争力を改善していくことが不十分であるという。 ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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