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「自然エネの接続中断は、経済的な理由だ」

再生エネ拡大による電力系統問題に詳しいアッカーマン博士に聞く

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 日本の自然エネルギー(再生可能エネルギー)をめぐる状況が混乱している。電力各社は昨秋、突然、自然エネの接続協議を中断すると発表。年末に国の審議会(系統ワーキンググループ)で、「導入(接続)可能量」を出してきたが、基本的に原発事故前の考えや制度に基づく自然エネに冷たい数値だった。

 経済産業省は、審議会の検討結果に基づく自然エネの固定価格買い取り制度(FIT)の見直し案について、1月9日までパブリックコメントを募集している。

トマス・アッカーマン博士拡大トマス・アッカーマン博士
 ドイツを拠点とする自然エネのコンサルタント会社のCEOで、欧米の電力系統問題に詳しいトマス・アッカーマン博士が昨秋、来日したのを機に、どうすれば日本の自然エネがもっと増えるのかを聞いた。

 トマス・アッカーマン(Thomas Ackermann) 自然エネルギーのコンサルタント会社・EnergynauticsのCEO 兼共同創設者。ドイツ、スウェーデン、デンマーク、米国などの風力発電業界および電力業界での業務経験をもつ。現在、ストックホルム王立科学院 (スウェーデン)およびドイツのダルムシュタット工科大学(ドイツ)で講師を務める。毎年開催される"Wind and Solar Integration Workshop"を 主催、電力業界や発展途上国に向けて、自然エネの系統連系に関する発言を続けている。ベルリン工科大学(ドイツ)で、機械工学の修士号およびMBA、ダンディン大学(ニュージーランド)で物理学の修士号、ストックホルム王立科学院で博士号を取得。

 ――電力会社が自然エネルギーの接続協議を中断するなど、日本では自然エネルギーをめぐって混乱しています。この状況をどう考えればいいでしょう。

 トマス・アッカーマン博士 いくつかの面があります。私はここ10年以上、日本の自然エネの発展を見ています。印象的なのは、風力発電の累積導入量が2.6ギガワット(260万キロワット)なのに対して、太陽光発電が新たに12ギガワット(1200万キロワット)も導入されたということです。福島第一原発事故の前には予想できませんでした。とても驚きましたが、前向きなできごとです。

 いくつかの電力会社が自然エネの接続を中断している状況は知っていますが、なぜ彼らがそうしているのかは、はっきりとは分かりません。7万件ぐらいの接続申請があって、多すぎて扱えないと言っていると聞きました。同じようなことはドイツやほかの国でもありました。電力会社は「すべてを処理するには時間が必要だ」と言っていました。でも、それは事務的な問題であって、技術的な問題ではありません。日本の電力会社も「7万件の接続申請を処理するほど社員はいません。もう少し時間をください」とはっきり言うべきなのです。

 多くの申請が来た時に、誰が接続できて、誰が接続できないか、誰が最初に接続できるかというガイドラインが必要です。欧州各国も、同じような経験をしています。急に洪水のように多くの申請が来た時に、だれをいつ接続するかという基本的なルールをつくるということです。

 突然、毎日1000件の接続申請くるのですから、やり方を変えなければなりませんが、事務的な問題です。電力会社は「あまりに多くの申請が来たので、どう扱うかのルールを決めるのに、時間がかかります。いまは接続を中断しますが、すべてつなぎます」とはっきり言わなければなりません。

 私が聞いた接続中断の理由は「系統安定化の問題」ということでした。電力会社が「系統安定化」と言う時には、いつも技術的な大きな問題だと印象づけようとします。一般の人には、難しすぎて理解できないからです。多くの人は、「系統安定化の問題」と聞くと、すぐに停電を意味すると考えます。ですが、電力会社は、何が技術的な問題なのか、明白な検証を示す必要があります。私が見た資料では、技術的な問題ではありませんでした。

 電力会社はこう言うべきです。「我々はこれから研究し、何が本当に問題なのかを突き止めます。解決策には費用がかかるでしょう。私たちは、だれがそれを負担するかについても議論しなければなりません。そうすれば、さらに多くのことができます」

 しかし日本では、議論の過程がまったく見えません。彼らはただこう言うだけです。「安定化の問題がある。私たちは何もできないので、接続を中止するしかない」

 何が本当の問題なのか、何の説明もない。技術的な問題の99%は、解決することができる。日本で聞く議論のほとんどは、経済的な問題です。電力会社が期待している最大の経済的な問題は、原発の再稼働です。自然エネは原発と競合する。自然エネが増えれば、原発の運転が減る。これは原発の運転コストが上がることを意味します。これは技術的な問題ではなく、経済的な問題です。「自然エネが増えれば、原発のコストが上がる」と、はっきり言うべきです。 ・・・ログインして読む
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筆者

石井徹

石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。

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