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東大の33本論文不正が見せた深い闇

研究費15億円 STAP細胞問題より深刻な捏造・改ざんの病巣

浅井文和 医学文筆家

拡大記者会見する浜田純一・東大総長=2014年12月26日、東京・本郷
 約15億円もの公的研究費を受けていた研究室で、33本の論文に捏造・改ざんの不正があり、11人が関与していた。

 東京大学は昨年12月26日、分子細胞生物学研究所で起きた論文不正の最終調査報告を発表した。判明したのは、不正の規模の大きさ、10年以上にわたる期間の長さ、当時の教授、助教授、特任講師らがこぞって責任を問われた構造の深刻さだ。

 記者会見で浜田純一総長は、「学術の健全な発展を大きく揺るがしたことは誠に遺憾」とおわびの言葉を述べたが、なぜこんな大規模な不正が起きたのかへの解明は不十分なまま、闇の中だ。

構造はSTAP問題より深刻

 ちょうど同じ日の同じころ、理化学研究所の調査委員会が記者会見し、STAP細胞から作ったとされていた細胞が既存の万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)だったとする報告を発表した。

 研究不正問題を取材してきた私としては、理研と東大とどちらの記者会見に行ったかというと、東大に向かった。

 世間から注目され、新聞でも1面掲載の記事になったのはSTAP細胞問題ではあるが、10人以上が関与したと認定された東大の方が研究不正としては深刻だと思う。

  東大の科学研究行動規範委員会は、2013年12月の中間報告で「科学的に不適切な図を含む」と認定していた論文51本、著者193人を対象に不正行為の有無を調べた。

 結局、33本の論文で捏造・改ざんの不正があったと認定した。このほか、10本には不適切な図があり、8本は訂正が可能な部分があったとした。

 33本の論文の掲載時期は1999年から2010年までに及び、ネイチャーやセルという国際的に著名な科学誌も含まれている。

 研究室の主宰者であった加藤茂明・元教授と、柳澤純・元助教授、北川浩史・元特任講師、武山健一・元准教授の元教員4人は不正行為があったと認定された。

 加藤氏は論文の捏造・改ざんを行ったわけではないが不適切な研究室運営などが問われた。

 柳沢氏、北川氏、武山氏は論文の図の捏造・改ざんなどが問われた。(具体的にどのような捏造・改ざんだったかは「東大の大量論文不正 解明すべき連鎖の構図」参照)

 さらに大学院生ら7人が論文の筆頭筆者であり図の捏造・改ざんに関与したと認定された。ただ、このうち5人については、「特異な研究慣行に従った、もしくは、従わざるをえない」状況にあり、教員側の責任が重いとした。

 加藤氏ら元教員4人と元助教2人の計6人は既に退職してものの「懲戒事由等に相当する可能性ある」ため、懲戒委員会で審議し、退職金の返納などを含めて検討する。

 研究室が受け取っていた約15億円の公的研究費については、返還を含めて検討中という。

 東大記者会見と同じ12月26日、徳島大学は北川氏に授与した博士の学位を取り消した、と発表した。

 調査報告の内容は東大の広報サイトで公開されている。

3年間にわたった調査で見えた限界

 問題は、なぜこのような大規模な不正が起きたのか。なぜ長年にわたって続き、途中で止めることができなかったのかだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 医学文筆家

元朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。連載記事「患者を生きる」「がん新時代」「認知症とわたしたち」などに参画。

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