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日本のイノベーション政策の絶対矛盾を衝く

偶発的に生まれるものを計画的につくろうとするジレンマ

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 「イノベーション」という言葉が日本を占拠している。メディアで「イノベーション」という言葉を聞かない日はなく、産官学の各種組織は「イノベーション」というメロディーに踊らされているといっても過言ではない。

第1回イノベーション25戦略会議にのぞむ(右から)高市イノベーション担当大臣、安倍首相、塩崎官房長官、下村官房副長官、鈴木官房副長官=2006年10月26日、首相官邸で

 発端は、第一次安倍内閣の時に閣議決定された「イノベーション25」にあると考える。第一次安倍内閣は2006年9月26日に発足し、イノベーション担当大臣(高市早苗内閣府特命大臣)というポストを新設、長期戦略指針「イノベーション25」を策定した。現在の第三次安倍内閣の成長戦略においても「イノベーション」は重要な部分のひとつとなっている。そして、日本の公的機関(学校、大学、研究所、自治体)や民間企業は、この「お上からのお達し」に「踊らされて」いる。

 しかし、このような国家主導型では真のイノベーションブームは起こらないと筆者は考える。そもそも、日本人の国民性自体がイノベーションの大きな障壁となっている。本論考では、これらを説明するとともに、真のイノベーションブームを起こすには今何をすべきかを提言する。

 先ず、

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