孔子学院と、語学教育による「刷り込み」
2015年01月29日
日本と中韓の緊張関係が続いている。国内の視線は尖閣諸島や竹島など領土や軍事に集中しているが、実は連動して中韓それぞれの「海外ソフト戦略」がある。ソフト=軍事ではないという意味だが、ソフトなのにアグレッシブ(攻撃的)で効果的だ。米国に住んでいるとそれがよく見えるのだが、日本ではほとんど知られていない。筆者はこの落差が気がかりでならない。ここでは中国「孔子学院」問題と、韓国系移民による「慰安婦像(碑)」問題を調べてみたい。
「テレビ孔子学院」も開設されている(2008年末から)。米国の衛星教育テレビネットで24時間放送され、全米の大学400校 、高校7000校と50超の都市に配信されている。視聴者は推定1500万人とされる。
その孔子学院が昨年6月、米国のニュースに登場した(実は筆者もそれで初めて学院の存在を知った)。米国大学教授協会が「孔子学院は中国国家の手足として機能しており、『学問の自由』が無視されている」と批判、関係を絶つよう各大学に勧告したのである。9月にはシカゴ大学とペンシルベニア州立大学が相次いで孔子学院の打ち切りを決定。カナダでもトロントの教育委員会が、孔子学院との関係解消を決めた(J-Cast 2014年10月3日、他)。
中国政府は自前の資金で講師を派遣し、無償の中国語教育を提供している。それを考えれば、多少の政治的バイアスがかかるのは仕方ないとも言える。だがどうもこの場合、その度合いが極端だった。教材の内容が徹底した中国美化と政治的プロパガンダに終始しているという。「中国政府のスパイ機関」とする見方さえ出ている。
ただトラブルの根は以前からあった。たとえば2012年、 米国務省が孔子学院で小中学生の指導に当たっている一部教師について、国外に出てビザを取り直せという通達を出した。そして孔子学院に対し「教育機関として、米当局に新たにライセンスを申請せよ」と要求した。
これに対し中国は猛反発、中国側と交流のある各大学にも働きかけた。その結果、米国側はなんとこの通達を撤回してしまったという(日経ビジネスオンライン2012年5月30日)。すでに侵入し根を張ってしまったものを追い出すのは、たいへんなのだ。
日本の大学にも「孔子学院」はとっくに侵入している。
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