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いま日本の原発と再生エネで何が起きているのか

『脱原発と再生可能エネルギー』刊行に当たって

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 日本人がドイツなどに行くと、次のような質問をよく受ける。(1)福島の事故が起きたにもかかわらず、なぜ脱原発の方向に進まないのか?(2)原発依存度が30%であった日本の電力は、どのようにして原発ゼロでまかなわれているのか?

 第1の問題は、我々日本人に突き付けられた深刻な問題提起であるが、第2の問題は立場を超えて、ある程度明確に答えられる。すなわち、福島の事故以来、節電とピークロードのカット(最高電力負荷を低減)を行い、電力需要を約1割下げて、他方で供給側は旧石炭火力発電設備などを復旧再稼働して賄っているからである――。

 しかし、他方においてCO2排出量の増大と化石燃料代金の負担増という問題が起きている。
したがって、省エネと再生可能エネルギーの拡大などを進めることが不可欠となっており、この面ではドイツなどと同じ課題を抱えているのである。

 再生可能エネルギーと脱原発の問題は、私がちょうどwebronzaに寄稿しはじめた2011年初から取り組んできた課題であり、3.11以降の事態をどのように分析し、方向を見出していくかが問われた4年間であった。この間、私がwebronzaに寄稿した論考は70本を超えた。それを4つのテーマに再編成して、『脱原発と再生可能エネルギー:同時代への発言』(北海道大学出版会、2015年1月刊行、3000円)としてまとめさせていただいた。この時期に区切りをつけたのは、1つには、現在、原発の再稼働とFIT再生可能エネルギー固定価格買取制度の改定が行われようしているからであり、また37年間勤務した北海道大学を今年3月に退職するからでもある。

 4つのテーマは、(1) 福島事故論、 (2) 脱原発論、(3) 再生可能エネルギー論、(4) 北海道のエネルギー環境問題、である。

 収録に当たり、各論文は誤記、事実関係の訂正以外は、もとのままにして、その後の事態の展開と検証にまつようにした。

拡大WEBRONZAの論考をまとめた『脱原発と再生可能エネルギー』(北海道大学出版会)

 福島事故論は、東京電力福島第1原発事故のよってきたる背景、原因、結果についての分析である。当事者である故吉田昌郎所長自身が「東日本壊滅」の可能性を予想した事故がなぜ、おきたのか、その事故の経緯もまだ十分に解明されていないことが、NHK『知られざる大量放出、メルトダウンfile 5』(2014年12月21日放送、NHKスペシャル「メルトダウン」取材班『福島第1原発事故7つの謎』講談社現代新書,2015年新刊)などによっても示されている。世界でもまれにみる地震・火山地帯になぜ54基もの原発がくまなく配備されるにいたったのか、こうしたことが十分に解明されないままに原発再稼働が進められようとしているのである。

 脱原発論は、日独の脱原発比較論である。日本で脱原発がすすまないのは、日本の電力システムが地域独占・総括原価方式によってささえられ、アメリカの「核の傘」のもとで「原子力ムラ」といわれる ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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